先週の野菜情報VOL.788でご紹介した、江戸時代の観相家・水野南北の「食により未来を変える」という思想。
その考えを、さらに一歩前進させたのが 石塚左玄(1851~1909年) です。
左玄は漢方医の家に生まれ、東洋医学を学びました。その後、明治の文明開化の中で西洋医学を学び、陸軍軍医となります。
しかし、東洋医学にも西洋医学にも限界を感じ、「本質的な食の意味」に気づき、医学的な観点から「食事療法」へとたどり着いたのです。
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福井県の漢方医の家に生まれた左玄は、「病気になったら治す」のではなく、「病気にならないように暮らす」という東洋医学の養生の考え方を幼い頃から学びました。
その後、日本政府が採用したドイツ医学を学び、軍医として多くの兵士や患者を診察します。
しかし、その中で「病気を治しても再発する人が多い」という現実に直面しました。
医療を深く追究すればするほど、西洋医学の対症療法だけでは根本的な解決にならないことを痛感します。
そして左玄は、「病気の根本には食がある」と確信し、医学的な知見をもとに独自の食養生理論を確立。その普及に生涯を捧げました。
この思想は後に弟子・桜沢如一によって受け継がれ、世界へ広がるマクロビオティックの大きな礎となります。
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左玄の教えは、桜沢如一や平塚雷鳥など多くの弟子たちへ受け継がれました。
その内容は「食の訓え」と呼ばれる、次の6つの教えにまとめられています。
① 食育は家庭教育
健康と命を育む食育は、家庭で親が行う最も大切な教育。
② 食用道
私たちの心も身体も食によってつくられる。食は命そのものである。
③ 人は穀食動物
人間は穀物を主食とする動物であり、日本人にはお米を中心とした食生活が適している。
④ 一物全体食
栄養は一部分ではなく食べ物全体にある。できるだけ丸ごといただく。
⑤ 身土不二
住んでいる土地の旬のものを食べることが、最も自然で健康的な暮らしにつながる。
⑥ 平衡
偏らず、何でもバランスよく食べることが大切である。
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水野南北は
「運命を変えたければ、まず食を慎め」
と説きました。
石塚左玄は
「生命を健やかにしたければ、まず食を正せ」
と説きました。
言葉は違いますが、二人に共通しているのは、
「人間の根本は、日々の食にある」
という確信です。
そして、その思想を受け継いだ桜沢如一は、
「食によって人生だけでなく、人類の文明も変わる」
と説いています。
この三人の食の先駆者たちは、「人は食によって変わることができる」と伝えただけではありません。
自分自身を整え、人生をより良くする鍵は「食」にあること。
そして、その実践は健康や運命を改善するだけでなく、人類の進むべき道さえも正していく力を持っている――。
そんな希望を、私たちに託してくれているのです。
