「間接産消提携が築く未来」野菜情報VOL.570 令和3 年8/8~8/14

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有機農業の若い生産者たち19 人が農業にかける思いを綴った「われら百姓の世界」という本が1983 年に出版されました。その中に、私たちがレジェンドと呼んでいる群馬の生産者の宮田常雄さんがいます。

宮田さんはその本の中で「なぜ有機農業か」という題名でご自身の有機農業への道のりを書かれています。宮田さんは子供のころから虚弱体質で苦労する中で「食養」に出会い、食べ物の重要さに気づいて農業の意義を認識するようになりました。そして、「万物を生じる母なる大地、一握りの土にはまた別の宇宙があったのだ」と、「生きている土」の世界を知り、まだ産声をあげたばかりの日本の有機農業を歩みだされました。宮田さんは有機農業の未来にかける思いを書かれていますので原文のままご紹介致します。

「異常気象、食糧難、このまま歩めば年につれ前途は暗くなるばかり、心身共に正常な人間として生き残ってゆくことさえ困難さを思わせる乱れた時代だ。解決の道は誰が考えようが有機農業を基軸としたもの以外ないはずである。新しい秩序を創造してゆこう。人体のように痛みも喜びも瞬時にして全体に及んで共有できるような有機生命共同体の社会づくり
をしよう。傷ついたとはいえ、農村には連綿と受け継がれてきた民族の知恵がある。『もったいない』という思想がある限り滅びはない。各地にきら星のように現われた有機農業の仲間たち、手を取って星座となり、太陽となって照らそう。新世紀の黎明を前にした今、母なる大地が招いている」

日本有機農業研究会 「われら百姓の世界」,野草社 , (1983年)

1975 年、有吉佐和子が環境汚染や食品に含まれる有害物質の複合(総和)汚染がもたらす危険をテーマに描いた「複合汚染」が出版され大きな社会現象になりました。そして、これを契機に「安全なものが食べたい」という都市部の母親たちの声が立ち上がり、生産者と消費者が直接つながる「産消提携」(さんしょうていけい)が全国で発生しました。そして、それから40 年が過ぎましたが、残念ながら有機農業による「産消提携」は宮田さんが描いたように地上を照らす太陽にまでには至っておりません。

私は今でも「産消提携」は「食」と「農」とを直接つなげることで自然界とつながり、私たちの「暮らしのボタンの掛け違いを治す力がある」と信じています。しかし、先週の「無農薬なら買ってくれますか?」野菜情報VOL.570 の虫の付いたキャベツは、「産消提携」の難しさを表しています。「食」と「農」を単純な直線でつなぐと立場の違いによる相違点が現れます。私自身も産直グループの一員として働く中でその限界を感じていました。そして、「食」と「農」を結ぶ「流通」がクッションになり「産消提携」を推進する「間接産消提携」が、「産消提携」の可能性をつないでいくと思い「げんきの市場」を運営しております。そして「満足の保証制度」を皆様と共に成熟させる事が未来を照らす光になると考えています。

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