「人、動物、環境(生態系)の健康は相互に関連した一つの円である」という「ワンヘルス」の概念が、感染症の世界的パンデミックの中で急速に広がっていることを先週の野菜情報で書かせていただきましたが、この言葉はそれ以前から薬剤耐性菌対策でよく使われています。
1928年のペニシリンの開発以来、感染症に使われてきた「抗菌薬」ですが、その歴史は常に耐性菌の出現との戦いであり、近年、世界であらゆる「抗菌薬」への耐性を持つ様々な細菌(薬剤耐性)が増えています。このために感染症の治療が困難になるケースが増えており、今後も「抗菌薬」の効かない感染症が増加することが予測されています。
「抗菌薬」は人間だけではなく、畜産業・水産業・農業など幅広い分野で使われます。その中でも畜産業の使用龍が多く、治療に使うだけではなく、劣悪な飼育環境の中での飼育のため、飼料にあらかじめ「抗菌薬」をまぜて育てます。そしてそれを食べた家畜の「食肉や鶏卵」を通じて消費者に広がります。2011年、WHOのアウ・アイダラーケン氏は家畜へ大量に抗生物質を投与する行為に対して、「『薬剤耐性菌』の出現を促進させ、汚染食品の消費や汚染動物との接種により、人への感染も拡大する可能性がある」ことを指摘しています。
そして、農業の中でも遺伝子組み換え作物の危険性の要因の一つとして抗生物質耐性が上げられています。一般的に進伝子組み換え作物の危険性は
①洗っても落ちることのない殺虫成分
②残留する除草剤
③迫伝子の再編成によるアレルギー物質の増加、
④抗生物質耐性遺伝子
の四つの項目をあげることが出来ます。④の「抗生物質耐性遺伝子」が組み込まれているために、その遺伝子が消化器官の細胞に転移し抗生物質が効かなくなる事を憂慮し、オーストリア、ハンガリー、イタリ、ルクセンプルグ、ギリシャ、ポーランドが遺伝子組み換え作物栽培を禁止しました。
WHOは「遺伝子組み換え食品に抗生物質耐性遺伝子を使用しないこと」を要請し、遺伝子組み換え食品を承認し続けてきたFDA(米国食品医薬品局)でさえ、「抗生物質耐性遺伝子は死亡率を高め、治療を長引かせる」と警告します。2013年、AFP通信では、米国で少なくとも年間200万人が抗生物質に耐性を持つ感染症にかかり、23000人がこの種の感染症で死亡しているとの調査報告が、米疾患対策センターの発表として公表されています。
ただ、私たちにとって大切なことは、「ワンヘルス」は未来への恐怖や打算からの義務ではなく、自分の中の健康から同心円で広げていく地球の健康であり、喜びなのです。それこそが「げんきの市場」が皆様と一緒に育てる「ワンヘルス」という地球の未来です。