11月26日、一足早く地場生産者の会(土と遊ぶ百姓の会)の忘年会が開かれました。今週はその時にお聞きした話を掲載いたします。矢部さんが向かいの席の名倉さんに「オレ、もう人参やめます。3回草取りをやるのが大変で…」と、こぼされていました。人参は畝に種を蒔いてから発芽をして小さな双葉が生えそろった頃に1回、そして本葉が開いてから1回、それから、人参が成長し、密集しだした人参を間引きしながら1回と、合計で3回を手で除草しないと一人前に育たちません。そして、それだけ手を加えても、矢部さんは人参が苦手でうまく育たず、もう何年も失敗を繰り返し「もう作りたくない」との事でした。いくら農薬を使わずに野菜を育てても、それでうまく育たなければ「買ってはもらえない」という現実が、無農薬栽培には常にあります。
それを聞いた名倉さんは、今まで人参の雑草の防除のために種を5cmの穴の開いたマルチシート(ビニールシート)をひいて、その穴の中に蒔いていたのですが、ここ2~3年は雑草が強くなり、その5cmの穴の中にまで雑草が生えてきてしまうそうです。それで、今年から名倉さんは穴の開いていないマルチシートを畝にひき、そこにひとつづつカッターで十字の切れ目を入れながら人参の種をその中に蒔いたと話されました。「結局、人力でやる事が一番確かなようです。今1万粒蒔き終え、残り2万粒を12月の中旬までに撒いて終わらせる予定です。」との事です。
また、名倉さんは夏場の害虫対策として土を60℃に加熱していると話されていました。「今から、3~4年前まではネットで覆い防虫対策をするだけでもいけたのですが、今はそれでは害虫に食べられます。現在も研究中ですが、土の中に元々虫の玉子があって、それが孵化されて、ネットの中でも野菜がやられてしまうのでは考えました。そうだとすると土の温度が60℃になると玉子が死んで孵化出来なくなりますので、それで、60℃になるように土をお釜に入れて焼いています。お釜の中で熱し過ぎないように水をかけながら、土を焼くのが意外と大変なんですよ。この土で育てた苗を畑に定植し、その日のうちにネットをかけて防除しています。」と話されていました。
吉澤さんの場合は、稲作がカメムシによる深刻な被害に悩まされました。カメムシに吸われるとお米が褐色になり、今年、吉澤さんのお米は「げんきの市場」でも販売出来ていません。被害粒が多く、農協に出荷しましたが着色米が多くて値段がつかない状態です。吉澤さんは「田んぼの場所により、被害の状況は違うとは思いますが…。うちの方でも、カメムシ対策の農薬(ネオニコチノイド系)を使った家は、それなりのお米が収穫出来たようです。ただ、その農薬は稲穂の中を吸う虫に使うもので、つまり、収穫間近に散布する農薬で、食べる人の事を思うと、どうしても使う事が出来ず、散々な結果になりました」と、今年の米作りを振りかえりました。生産者の皆さんと語らい、私たちの暮らしの中で安全に作物を育てる努力をしている農家の方々がおり、ご苦労されている事を深く感謝しました。ただ、それは私たちが買い支えなければ遠からずに消えていきます。安全を守る為に生産者の方々のその気の遠くなるような地道な作業に、改めて心から敬服をすると共に、そうして育てられ、食卓に届く野菜たちの価値をどうしたら伝えられるのかと考えました。