メニューのない料理教室 「エンブレス キッチン」が始まります 野菜情報VOL.667 令和5年7/31~8/5

  • URLをコピーしました!

「畑を丸ごと抱きしめる!『エンブレス キッチン』」が石垣祐介さんご協力のもとで開催出来る運びとなりました。「げんきの市場」でずっとやりたかった料理企画です。私が産直グループにいた20代の頃、集荷に訪れた生産者のお宅で「終わり旬だから食べていきな」といって、お茶うけに「インゲンの胡麻和え」を出していただきました。筋張ったインゲンを茹でて細かく刻み胡麻和えにしたものでしたが、育てた野菜を最後まで食べつくす農家の暮らしに、いただくものへの慈しみを感じました。そして、千差万別に実る野菜の中にこそ、生命のぬくもりがある事に気づきました。「いつか畑でとれる野菜を余すことなく食べものとして届けたい」。それはこの仕事を続けていく中での、私の願いとなりました。

 今回この事を石垣祐介さんにお話したところ、「それなら、あらかじめつくる料理をきめるのではなく、その日に農家さんに持って来てもらった店先には並ばないわけあり野菜たちを見てから、参加された方と一緒に何をどう作るのか考えて決めましょう。プロである主婦の方たちと一緒に自分も考えて、作って、食べる、それを楽しめる会をやってみたいですね」と言っていただきました。石垣さんは調理専門学校を卒業後、表参道の「ル・パピヨン・ド・パリ」を皮切りに広尾の「セパージュ」、丸の内の「MAISON BARSAC」とフランス料理の店で腕を磨きました。「最初はイタリアンをやりたかったのですが、洋食の基本が詰まっているという事でフレンチを学びました。毎日忙しく、そうした店で特別な料理を作り続ける中で、昔、母や祖母がつくってくれていた料理が懐かしく感じるようになりました。そして『日常の食をつくりたい』と思うようになり、知人の紹介で介護施設の食事をつくる仕事に変わりました。施設ではそれぞれの人の容態に合わせて形態の違う食事に変える事があり、それがものすごく勉強になりました。」その後、石垣さんは結婚したこともあり、こどもの「食」に興味を持ち、現在は「保育所」の給食をつくられています。「子供のお母さんから、『家では食べられない野菜が、保育園のお陰で食べられるようになりました』と、声をかけられるとうれしいですね」と、現在の仕事のやりがいを話されています。

 石垣さんは3年前からおじいさんの畑を引継ぐことになり、保育所での調理の傍らで野菜づくりを始めました。そして、それにより気づいた事がありました。「調理だけをやっている時は、野菜は同じ大きさで形がそろっているのが当たり前でした。忙しい調理場では効率よく調理する事が何よりも優先されていますから…。それが自分で野菜をつくりだして、考えが180度変わったんです。自分が育てている畑では、当然、野菜はいろんな形で育ちます。それで自分が育てたキュウリが曲がって出来ても嬉しいですし、そのきゅうりがやっぱり美味しいんですよ」。そうした畑での経験をして、今回の企画に賛同していただいたようです。私たちは家庭科の授業で良い野菜の選び方を学びました。そして、畑では規格から外れているだけで野菜が流通から排除されます。「エンブレスキッチン」を通して、石垣さんと共にメニューを考え、楽しく、行き場のない野菜たちを美味しく食べ、感謝出来ればと願います。

よかったらシェアしてくださいね!
  • URLをコピーしました!