今年の正月に赤峰正人さんの「ニンジンから宇宙へ」(1996年刊)を読みました。今週はこの本をご紹介します。「作物が生まれる瞬間のピーンと張りつめた瞬間」に魅せられていた赤峰少年は農業高校を卒業すると父親の慣行農業をつぎます。そして、就農した当初は「とにかく見かけも味もよく高く売れる野菜をたくさん出荷して収入をあげることを農薬と化学肥料を使った現代農法で目指しましたが、順調に生育するのは始めの3~4年で、やがて作物が病害虫にやられ、農薬を使っても解決はしませんでした。そして、10年近くの試行錯誤の日々の中で、ある日、畑で刈った雑草を2年積み上げた堆肥だけを入れた畑で作ったピーマンがあまりにも良くできたので、試しにその土を分析すると理想の分析基準値にピッタリ当てはまる土が出来ていました。そして、今まで自分が一生懸命努力してきたのは「土の命を殺す悪循環への努力だった」と気づき、後に「循環農法」と呼ばれる、生命循環の環となる無農薬・化学肥料無しの野菜づくりへとたどり着きます。
今、最も注目されている農業人のお1人である菌ちゃん先生こと吉田俊道先生(オンライン通信講座の登録者数は1万人以上)は、赤峰さんの事を「私の師匠」と呼んでいます。吉田先生と赤峰さんとのその出会いを回想した吉田先生の言葉がネットに上がっていましたので、少し長い文章ですが引用させていただきます。赤峰さんのお人柄と思想がよくわかります。「『農村破壊工作員だな!』。私が初めて赤峰さんの問答塾に参加して、私が農業改良普及員だと知って、赤峰さんにかけられた言葉です。その辛練な言葉と同時に向けられた、あの屈託のない笑顔は今も脳裏に焼き付いています。『今年度で県を退職して農業をする!』。8月ごろ、そう心が固まったちょうどそのときに、赤峰さんとの出会いがありました。『自然は循環しているんだ。害虫は神虫さん!病原菌は神菌さん!…』。大面積で、米も野菜も無農薬無化学肥料で作られている赤峰さんの実践に基づく言葉は、私がこれから挑戦する有機農業に、とてもとても力強い自信と勇気を与えてくれました。それから何度も畑見学に出かけ、教えを講い、赤峰さんを地元にお呼びしてきました。あのとき赤峰さんと出会わなかったら、私の今の農業人生はどうなっていたのだろう…。公務員から農業者になるという重要な人生の転換期に出会い支えていただいた私の農業の1番の師匠でした」。
赤峰さんが「ニンジンから宇宙へ」と題名を付けた理由を「この宇宙に存在するすべてのものは、さまざまに支えあい、お互いを生かしあっています。水も空気も光も土も草も鳥も虫も、そして、人間も、地球もです。何かがかけても、何が秀でていてもいけません。宇宙にはすべてのものが同じ重さで必要なのです。宇宙のすべてのものを1つにつなぐものが、循環の環です。私はそれを、土まみれのニンジンから教えてもらいました。」と書いています。そして本書は「土の話」、「塩の話」、「根っこの話」、「知ってほしい話」、「循環の話」、そして最終章の「人の使命」へと進みます。今、人災による自然破壊が進んでいる中、もし未来に希望を持つとすれば、人の使命に照らし合わされた消費が生まれ、消費者が変わる事が出来れば、それにより農家も変わり、未来が変わると指摘しています。赤峰さんがニンジンから学んだ「大宇宙の循環」に私たちが従う事か出来るのか出来ないのか?それを今、この時代に試されています。それこそが私たちの使命なのです。
