微生物の「多様性」を育てる事が自身と地球への感謝へと繋がる 野菜情報VOL.696  令和6年3/3~3/9

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先週の野菜情報VOL.695で「あなたの体は9割が細菌」(アランナ・コリン著 河出書房刊 2016)をご紹介いたしました。今週はこの本を読み終えて、個人的に感じた事を書かせていただきます。まず思ったのは農学博士の横山和成博士が提唱されている「土の世界」との類似性です。

 土の豊かさは、PHや窒素、リン酸、ミネラルなどの「化学性」、粒状や水はけといった「物理性」、そして微生物やミミズなどの小動物といった「生物性」の3つで表せますが、横山博士はその「生物性」に注目されました。その世界は、1g(1円玉の重さ)の土壌の中に兆の数の微生物が存在し、千種以上もある種類の中でそのほとんどが新種であり、培養して調べようとしても実際に目に見える数は百分の一以下で個々の機能もわからず、群としての機能も組み合わせが多すぎ、現代科学の世界が入り込めない世界でした。その中で横山氏は、微生物同士の関係性が複雑に絡み合ってわけのわからない、それ自体を物差しにする「多様性」を数値化しました。そしてその「多様性」が大きければ大きい程、作物の根が育ち、病害虫に負けずに丈夫に育つことを発見しました。そして同じ作物を続けて同じ畑で作り続けると連作障害になりますが、土壌微生物の多様性が多い程に連作障害を抑止する土壌になる事を突き止めました。

 また以前にげんきの市場で講演をしていただいた菌ちゃん先生こと吉田俊道先生が、SNSの中で書かれた話を連想致しました。「農業普及員をしていた当時、とても元気に栽培されていたハウスキュウリに病気が蔓延し土壌殺菌剤で土の中を殺菌しました。その後回復しましたが、また、数年後に同じ病気が蔓延しました。それで、前よりももっと濃く、もっと深く殺菌しました。それを2~3回繰り返したある日、見学者が入ったところ、靴の底に病原菌がついていたのか、ハウス全体がたちまち全滅しました。長年の消毒により、病原菌も有用菌もいなくなっていた畑で、かろうじて育っていたキュウリは、異端の病原菌が入ると、それが激発生をして、あっという間に全滅してしまったのです」。

 そして、前にテレビで見た、タンザニアの狩猟採集民族ハッザの腸内環境を調べた番組の事を思い出しました。彼らの食生活は狩猟で狩る肉は少量(猟はなかなか難しい)で、トウモロコシの粉をお湯で練った「ウガリ」を主食に、いろいろな木の実などを採集で得た植物系の食べものでした。その彼らの腸内環境は善玉菌の代表とされるビフィズス菌が最高でも1.23%、検査したハッザの10人中8人が実に0.1%未満でした(日本人の平均が5~10%)。しかし、最終的にはハッザの方が日本人よりも善玉環境は上回っていたのです。その土地の植物をとり、腸内の食物繊維量を増やし、腸内細菌が多様となっていました。ちなみにハッザは1日平均100gの繊維をとっているのに対し、現代人は15g~25g程度です。つまりその土地の有用菌が住み着いている植物や穀類を沢山とる事により、腸内微生物の多様性が生まれ免疫力を高めていました。私たちの生命は土の世界から繋がっています。身土不二を実践出来る私たちの暮らしを大切にしたいものです。

 

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