「世界的インフレーションと食糧メジャーの戦略の中での選択」野菜情報VOL.595令和4年2/13~2/20

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 ラーメンやパスタなど安全な小麦粉製品の製造を手掛けている桜井食品から自然食品の卸会社ムソー株式会社に3月より商品の一部値上げの連絡が入りました。そのお知らせには、「小麦の政府売渡価格が 2021 年 10月1日から引きあげられ、それに伴い、輸入小麦のみならず国内産小麦にも影響が出ており、また包装資材も原料価格の高騰が続いており、使用している資材も既に仕入れ価格が上がっている状況であり、まことに不本意ながら、販売価格を変更させていただきたく、ここにお願い申しあげます。」と理由が書かれていました。

 同じようにバナナもコンテナなどの輸送費や使用している肥糧の高騰、マヨネーズも原料や包装資材の高騰により値上げの案内が届いています。テレビでは石油や大手食料品の値上げが取り上げられていますが、「げんきの市場」が取り扱いしています自然食品もご多分に漏れずその影響にいたるところに出ています。そして、このような食料品の価格上昇は日本だけのことではなく世界中でここ数年続いており、途上国では深刻な事態を招いています。

 2019年10月8日の日経新聞電子版によると異常気象やバイオ燃料の加速により穀物が27%、植物油価格は61%の上昇しており、食料インフレは主食を輸入に頼る途上国の家計に致命的な打撃を与えています。国連では6億6000万人は飢餓状態にあると警告し、国連食糧計画(WFP)のビーズリー事務局長は同年9月の国連食糧サミットで「毎年900万人が飢餓で命を落としている」と指摘しています。

 そして今、人間が生きていく上で必要不可欠な食べものが「食糧システム」を掲げる僅かな企業が握るものへと変えられようとしています。その現象が露骨に表れているのはコロンビアです。コロンビアの農家がこれまで使っていた種苗を使って農業していたところ、登録された種子でなければ許されないとして、その収穫物は没収されました。その登録されている種苗の多くは多国籍企業所有の種子なのです。このようにして知的財産権が設定された少ない種類の種苗を押しつけ、農業の多様性は奪われのと同時に食料主権も失ことになります。

 世界的な食糧インフレーションの中で、文字通り「生命の源である食糧」を市場原理が優先する一部の多国籍企業が寡占しようと世界戦略を進めています。経済を推進するのは市場原理であり、その欲望による経済の恩恵を私たちも受け、社会は進化しました。しかし、微生物も草も木も昆虫も魚も鳥も動物も人間も、地球に連なる全ての根底は「生命の原理」なのです。私たちは今この時代に、「生命」という価値を中心にした経済を育て、自律神経に例えるなら「欲望を中心とする経済という交感神経」と共に「生命を中心とする経済という副交感神経」によるバランスが必要です。この生命経済が成立し、二つの経済が一つとなる事こそ、陰陽がそろい万物が流れる道となります。

 日本の農地面積全体の中で、JAS有機栽培と農薬・化学肥料を使っていないという農地(未認証)を合わせても、わずか0.5%に過ぎません。そのような現実の中で、地域のオーガニック生産者がスクラムを組み、皆様の食卓の旬の野菜が鮮度の良い状態で届くことは、安全、美味しいを守るというだけでなく、私たちの食糧安保の視点からも有効です。そして、私たちがこのような意識を持ちながら食べものを買うという行為は、実は私たちが望む未来を直接的に選ぶ手段でもあるのです。

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