11月5日、山形県庄内三川町のお米の生産者の菅原義弘さんが「げんきの市場」を訪ねてきてくださいました。今年の5月より菅原さんからJAS有機栽培の雪若丸をいただいています。菅原さんは今年26歳の若き生産者です。現在、5町6反で稲作をしており、そのうち4町歩が有機栽培で、品種は雪若丸とつや姫とひとめぼれの3種類を育てています。
菅原さんは高校を出てすぐに2年間、農業研修に入り、その後に就農されました。「自分の父親がもともと有機栽培で稲作農家をやっていました。庄内は日本でも有機農業が盛んな土地なので、それほど考えることはなく自分も有機農業に入りました。当初は父親に色々とアドバイスを受けて米作りをしてきましたが、徐々に自分の米作りを心掛けるようになりました。」
雪若丸は平成30年に山形県でデビュー以来、品種として最高評価の特A をとり続けている食味のいい品種ですが、ご飯ソムリエの資格もある菅原さんに雪若丸の特徴をお伺いすると、「粒の大きさが味の良さに直結していて、甘みや香りと共に食感を楽しむことが出来る品種です」との事です。そして、一番最初に雪若丸という新しい品種を山形県でJAS有機栽培したこともあり、とことん自分の中でこだわりたいお米だと話されていました。
菅原さんが手がけている無農薬栽培での最大の問題点は稲と一緒に育つ雑草の除草の問題です。菅原さんの場合は田植えの3週間後に合鴨を離して雑草を食べてもらう合鴨農法ですが、それだけでは雑草はとり切れません。その他にも機械除草と手取りで3回の除草をされています。夏の田の草取り(除草)は重労働ですが、「自分は高校までずっと剣道をしていたので、夏の暑いのには強いんですよ」と笑って答えられました。
就農されて今年6年目の菅原さんに、農業について良かったことをお伺いすると、「食べていただいた人に美味しかったと言われるとやはりうれしいです。それに有機栽培で心から安心して食べる事が出来ると言っていただくとやりがいを感じます。」との事でした。菅原さんは稲の生長する姿を見るのが好きで、就農してから3年目位までは天職に就いたとの思いがあったのだそうですが、他の世界で働く同世代の人たちとの交流が増えるにつけ、あまりに違う労働環境に、「やはり色々と悩むこともあります」と、率直に語られていました。
農林水産省の農業労働力に関する統計によると、日本の専業農家の平均年齢は67.8歳、そして65歳以上が占める割合が実に94.9%に達しています(令和2年現在)。菅原さんが卒業された時でも学校を出て直ぐに新規就農する若者は、山形県庄内地方という日本有数の農業地帯でも彼以外に1人いるだけだったそうです。決して遠い未来の事としてではなく「私たち日本人の食の行きつく先」への不安を感じざるをえません。そして、稲の育つ姿を眺めるのが好きで農業に就いた若者のその道のりが実り多いもとのなり、私たちがそのお米を食べ続けられることを心から願います。