「美味しい野菜を食べるようになってから、足りなくてもスーパーで野菜を買う気になれず、げんきの市場で注文しよう!!と思ってしまいます。箱を開けたときの土のいい香りが大好きです!!」宅配を始められたばかりの若い奥様から、こんな素敵なコメントを注文書に添えてFAXを送っていただいとことがあります。
「泥付きの野菜は洗うのが面倒くさい」、私自身を含めて誰もが思う事ではないでしょうか?家庭の台所で、野菜の泥の洗い流しというひと手間は、しないで済むならそれに越したことがないというのが私たちの本音です。ただ、前に生産者から、「まとめて野菜の土を洗い流すと、どうしても表面に傷がついてしまうことがあるので、本当は洗わないで家庭に届けた方がいいのだ」と、お伺いしたことがあります。
吉川市で就農して以来、25年以上農薬無散布無化学肥料栽培で野菜を育てている名倉さんは畑の土を盗まれたことがあるそうです。何年もかけて土づくりをした畑の土が、ある朝、ごっそり掘り起こされて盗まれていました。「やっといい土が出来たと喜んでいたらそれを盗まれて、私にとっては野菜を盗まれるよりよっぽど辛かったです」と話されていました。
「土」はいっけん岩が風化して細かくなったものだけに見えますが、植物、動物、昆虫、微生物といったあらゆる生物が関わることでつくられます。まず、岩が膨大な年月の中で、水や空気にさらされて細かくなり、さらに微生物や植物が岩や砂から栄養を吸収するために、酸性物質を出して水に溶ける形にします。そして、その植物を昆虫や動物が食べ糞尿を出し、また生物が死んで、それをまたミミズや微生物が分解して…という生命の大きなサイクルがあって「土」になります。つまり、生命が存在しないところでは土ができないので、月や火星には岩や砂はあっても、「土」はないのです。
土1g(1円玉の重さ)の中には億から兆の数の微生物が存在し、その種類は千種以上、その種類も群としての組み合わせも多すぎて現代科学の世界が入り込めないのが土の世界であると農学博士の横山和成氏は指摘しています。土は一見茶色い鉱物のように見えますがまさしく生命の塊で、その中で微生物は約40億年前から地球上にいて生命のエネルギーを回し続けてきました。「水の惑星」と地球はいわれますが、それと同時に地球は「土の惑星」でもあるのです。