「農薬のかかった無農薬野菜」野菜情報VOL.545 令和3年2/14~2/20

「いずれ日本のマーケットの中には無農薬という農薬のかかった無農薬野菜が氾濫(はんらん)しますよ」。

今から50年近く前、発足間もない日本有機農業研究会の機関紙「土と健康」のインタビュー記事の中で、当時、春日部にあった産直グループ「あいのう野菜の会」(私「山下」が10年間在籍していたグループです)の代表をされていた片井義二さんが語った言葉です。それは、私たち人類が「人間本位」で自然にかかわる事への警鐘(けいしょう)でした。

キュウリは、本来、ブルームといって低温や病気から自分を守るための白い粉が果皮を覆います。しかし、この白い粉が農薬のようで気持ち悪いという消費者の声があがり、かぼちゃに接ぎ木をしてブルームの出ないブルームレスキュウリが生まれました。そして、現在、ブルームレスキュウリが主流になっています。片隅に追いやられたブルームキュウリは皮が薄くシャキシャキとした食感で香りもよく食味は断然ブルームレスキュウリよりいいのですが、白い粉が農薬に間違われるという理由で消えていきました。

同じように「じゃがいもは芽が出ない方がいい」で放射線をかけ、「食べ物は腐らない方がいい」で保存料を入れ、農薬をかけ、化学肥料を入れ、遺伝子組み換えをしてきました。私たちは自然の摂理を克服し、努力を重ね続けています。そして、その延長線上に浮かび上がる「安全」は、単に志向性を変えただけのものに過ぎません。そのことを片井さんは「無農薬という農薬のかかった無農薬野菜」と表現されました。

片井さんが「あいのう野菜の会」の中で一貫して述べられていたのは、《農》と《食》とのかかわりの中で《野菜の本質を見極める》ということで、それは「自然とのかかわりの中で生命の本質」を見極めるということでした。私自身がこの仕事の意義を感じているのも、「商品」としての野菜から「生命」としての野菜へという転換の中で、それが自然界と連動することにより地球で生きる『生命としてのしきたり』を、暮らしのなかに取り戻せる力になると信じているからです。今、私たちは「人間本位」の存在から、地球とともに生きる別の私たちへと生まれ変わらなければならない時を迎えています。

2001年にJAS有機の認証がスタートし、それから20年たちました。食の安全への思いはますます市民権を得ています。だからこそ私たち「げんきの市場」は伝える力を持ちながら、一人でも多くの方に野菜を届けていきたいのです。私たちにつながる未来のために…。

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