「自然との共生とは?」野菜情報VOL.543 令和3年1/31~2/6

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「人と自然とのかかわりは、どのようにあるべきなのか?」それを深く考えさせられるドキュメンタリーを見ました。

世界自然遺産の北海道知床には、人を襲うこともあるヒグマがおよそ500頭も生息しています。その中でも特別に保護されているのがヒグマの世界有数の密集地帯のルシャです。ルシャにはおよそ60頭のヒグマが住み着いています。そして、そこで漁をするための番屋と呼ばれる作業小屋を持ち、その中で暮らす15人の漁師たちがいます。漁をする人間の営みと隣り合わせにヒグマたちが生きていおり、世界中、どこを探してもヒグマと人間がこんなに近くで暮らす場所はありません。その中で暮らす代表の老漁師は、この土地で生きる中で、かつてこの地に暮らしていたアイヌの人々と同じような考えに至りました。

「自然の中に熊がおって、その中にまた人間もおる。人間がそこにいるのも一つの自然の姿だから、山の木や草それだけが自然ではない、そこで働いている人たちもひとつの自然の中で働いている。生活の場所であることも自然の成り立ち。」人間の営みも、ヒグマたちの暮らしも、隔てることなく同じ自然の中の営みであり、同じ雄大な自然の一部であると…。

しかし、そんなヒグマと人間の共存の姿が存続の危機に立たされています。自然遺産に登録したユネスコの基本的な考え方は、人口的なものを排除し自然そのものの姿を後世に残すことであり、5年前にユネスコは日本政府にルシャ川を横断する道路や橋などを撤去するように勧告してきました。そして、その世界遺産の調査団が、アメリカの自然保護の権威、国際自然保護連合ピート・ランド博士を代表に訪れました。漁師の代表として老漁師が出迎えると、車から降りてきた博士は、橋の撤去の確約を求めますが、作業に必要不可欠の橋の撤去は無理だといい話し合いは平行線をたどります。

するとそこに3頭のヒグマがそれを取り囲むように突然にあらわれ徘徊しだしました。襲ってくるものだと、一瞬身構えた博士たちユネスコ調査団でしたが、ヒグマはそれ以上近づいてこずに、何かを訴えかけるように人間たちを何度も見て立ち去っていきました。アメリカではありえない光景を目の当たりにし驚愕した博士に対して、老漁師は「ルシャが世界に誇るべきなのは人とヒグマとの距離感。ここでは命を奪い合うことがないことを世界遺産にしてほしい」と訴えました。

「いかなる時も人間とヒグマとは安全な距離感を保つことが絶対であり、自然と人間との間には線が引かれるべきだ」という博士の考え方は変わりませんでしたが、私は、人間も自然の中の一部として振る舞い、自然の中で生きる姿を模索する老漁師の姿に深く感銘を受けました。私たち「げんきの市場」は、ご縁を得た皆様と一緒に食卓に彩られる喜びと共に、野菜を通してこれからも「人と自然とのかかわり方」を考えていければと思います。

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