「げんきの市場」が開催している「佐藤先生の健康講座」の中で、欧米人と日本人との体質の違いについて、「見た目からわかる目の色や肌の色の違いと同じように、腸の長さが違う事」を指摘しています。欧米人の腸が4mに対して日本人の腸の長さは6mと2mも長く、そして、それが肉食に向かない理由として挙げられています。6mもの長い腸管の中で、真夏の温度と同じ36~37度の高い中で消化すると、その中には消化しきれないものが腐敗する場面があり、それがインドール、スカドール、アミンなどの有害物質を生成しガンなど様々な病気の要因になります。ちなみに「腐」という漢字の「广」は五臓六腑の腑を表していますが、腑とは腸や胃などの空洞になっている臓器の事です。そして、その腑(腸)に「肉」が「付く」と腐るというのが、「腐る」という字の成り立ちだと言われています。
飛鳥時代、西暦675年に天武天皇が仏教の教義に基づき肉食を禁止してから、明治に入って1871年に明治天皇が肉食解禁令を出すまでの1200年近く、日本人は殆ど「肉」を食べてきませんでした。そして、穀物(お米)を中心に食べてきた日本人は、腸の長さだけではなく、その中の腸内細菌もそれに合わせて変化してきました。人間の腸には人種を問わず約1000種類の腸内細菌が約100兆個存在します。その中で、日本人の腸にしか存在しない細菌が半数近くも占めています。それらは穀物に含まれる炭水化物やアミノ酸を無駄なく利用するのに役立つ細菌が多く、また穀物に含まれるでんぷんを消化するのも得意です。
このような日本人特有の違いは腸だけでなく胃の形状にも表れています。日本人の胃は鉤状胃(こうじょうい)という釣り鐘型のカタチをしています。穀物は食物繊維が多いため、胃のぜん動運動によってドロドロになるまで砕き十分に処理してから腸に送り届ける必要があり、胃が袋のようになって出口が高い位置についています。これに対して西洋人の胃は牛角胃(ぎゅうかくい)という牛の角に似たスッキリとした形です。脂肪とたんぱく質はおもに小腸で消化されるため、胃での処理は手早く終えて腸に送り出せるように胃酸量は日本人より約2倍多く、分厚い筋肉を使って内容物を力強く押し出せるようになっています。
私たち日本人は長い年月により培われた日本人特有の体質というものがあります。それを無視すると、健康になるためにやっていたのに、それがかえって健康を壊す原因になっていたという事もありえるのです。世界中がインターネットでつながり身近になった今、巷では実に様々な健康法が溢れています。その中で、私たちが気をつけなければならない事は、その健康法が、私たち日本人の体質に合っているのかという事です。その事を最新の遺伝子生物学を踏まえて医師の立場から提言されているのが医学博士の奥田昌子先生です。次週はその先生の著書である「日本人の『遺伝子』からみた病気になりにくい体質のつくりかた」(講談社 2022年刊)を読み解きながら、私たちが健康に生きる方法を考えて参りましょう。