長年、「げんきの市場」が安全で美味しいりんごを頂いている青森の伊藤農園さんの農場主・伊藤元さんが書かれた文章が、2026年2月27日の朝日新聞の「オピニオン&フォーラム」コーナーの投稿欄に掲載されました。その投稿を今週は掲載させていただきます。
大騒ぎだったコメ政策 どこへ
農業 伊藤 元
(青森県 65)
今回の選挙中も、お米や農業についての政策があまり聞かれなかった印象です。昨年、「令和の米騒動」と言われ、値動きは常に報道され、様々な意見や不満が飛び交いました。つい半年前は大騒ぎしたのに、どうしたことでしょう。
私は農業の現状と今後に疑問を抱きます。食料自給率をどうあげていくのでしょうか。今の日本農業に欠かせないタネや燃料、肥料、飼料、農機に使う鉄鋼はほぼ輸入です。
そして、農業人口の減少。私は40歳で転職して就農26年目。農村の変貌は驚くばかりです。担い手の中心は60代から今や70代前後。若手は数えるほど。収入面では比較的いい「りんご」すら働き手は減少傾向です。水田農業は比較的助成がありますが、農機頼みだから機械が入らない中間地などは捨て置かれたままです。私は楽しい農業をやりたいですが、現状ではとても不可能です。
食料や社会保障は市場経済から切り離すのも一案です。私は幼少から農業に触れてきました。都市を中心に自前の食料や生態系などへの関心が弱いと感じます。これらの問題抜きに、国のあり方を考えることは、できないのでしょうか?
連日、あれだけマスコミが「コメ騒動」を取り上げて社会問題としながらも、国の行く末を決める大切な選挙の中では、大きく取り上げられる事はありませんでした。伊藤さんは農村の中で農業で生きいく事を決めた一人として、どうしても今起きている日本農業の現実を、一人でも多くの人に知ってほしいとの願いでこの投稿を「朝日新聞」に送ったそうです。しかし実際に掲載された投稿は半分程度に要約された文章になっていました。伊藤さんにそのカットされた文章の内容をお聞きました。「農業と一口で言っても、稲作、酪農、養鶏、土物栽培(ジャガイモ・さつま芋等)、葉物栽培(ホウレン草・小松菜等)といったカテゴリー事に考え個別に対策を考えていかないと、決して本当の解決策にはたどり着けません。例えばうちの従兄弟が北海道で酪農をしていますが、飼料は100%輸入に頼っています。近くには牧草地があり、それを刈ってサイロに貯蔵し発酵させて飼料にすれば輸入に頼らなくても済むのですが手間暇やコストがかかり過ぎるんです。合理化でコストを削減して何とか農業経営を維持しているのが現状です。私たちりんご栽培も、枝の剪定にしても何十年もかけて習得する技術なんですが、その技術をもっている農業者がどんどん減っており、またそうした技術者を支える単純作業を請け負う人も同じ状況です。ぜひ、皆さんが農業の持つ価値を『食料保障』だけに目を向けずに国土に農業が在る事の意味を多面的に理解して、農業が続く道のりを、都会の人にも一緒に考えてほしいんです」。伊藤さん、全くもって、その通りです!
