今週も先週の野菜情報VOL.751に引き続き、青森の伊藤農園さんのリンゴ畑で起きている状況をお伝えします。前回の野菜情報を載せるにあたり、伊藤さんに確認していただいた所、「大雪の被害の他にも、今はまた新たな状況に悩まされています」との返事でした。そして、伊藤さんがそれについてレポート用紙に書いて、送ってくださいました。まずはその文章をお読みください。
追加になりますが、この10日程、りんごの「ガン」ともいわれる「りんご腐らん病」(りんごふらんびょう)が例年になく多発しています。私がりんご作りを始めて25年、これだけ多発しているのは初めてです。40年近くやっている弟も「これだけ多いのは初めて」と言っています。これも今はうわさの段階にすぎませんが、大きなニュースになりそうに感じています。私が思うに例年4月中旬頃の第1回の薬剤散布時、腐らん病対策の薬剤「トップジン」か「べフラン」を必ず使用するのですが、今年は伐裁作業が加わったための剪定が遅れ、薬剤散布も数日遅れたこと、また4月に入ってから温暖な天候が続き、病原菌の成長感染条件が揃ったように見える、このような事が考えられます。「腐らん病」は糸状菌病で胞子が切り口や果台などから侵入して感染し、主に樹体のどこにでも増殖し木が腐敗し表皮を破壊します。こうなると水分,栄養分を吸い上げられず、患部から先が枯死します。そこまで行くと切断、伐栽し、処分するしかありません。治療法としては薬剤散布の他、患部に「泥」を塗りそれをビニールとひもで固定し「封じ込める」作業が必要になります。小さい幹くらいなら治療も楽ですが、直径50㎝位の大きな木の治療は難行します。感染力も強いです。実ではなく木がやられると、その瞬間から永年、収穫不能になります。
伊藤農園 伊藤元 2025.5.17
「腐らん病の発生はその年によって大小の違いはあるものの毎年発生していますが、これ程ひどい状態は始めて」との事。リンゴの木の「ガン」と言われているように再生は難しく、発生して1年目で治るかどうか維持管理をして、治る見込みがない場合は伐裁して、病気が伝染しないように焼却して土の中に埋めるのだそうです。とにかく作業量が制限なく増えていく事が予想されます。
今、伊藤さんから届いているりんごにはよく黒い斑点がついています。お伺いすると、「まだよくわかっていないのですが、実がついたばかりの小さい時に、はまき虫などの幼虫がかじったのが、りんごが成長するにつれ自己修正力でりんごの実は影響なく育つのですが、皮に黒い斑点として残ってしまうのだと思います」との事でした。今は慣行栽培に切り替えてお付き合いがなくなった果樹生産者から、「防除規定で40回農薬をかけなければいけない果物の1回か2回を農薬散布しなかっただけでも、全滅に近い状態になる事も有るんですよ。それだけ日本の果樹栽培は難しいです。」と、悲痛な思いをお伺いした事があります。先週と今週にわたり、伊藤さんのりんご畑で起きている厳しい状況をお伝えしました。異常気象の中で、農薬を減らして栽培を続ける伊藤さんに、かつてない程の困難が降り注いでいます。私たちは、異常気象の中での栽培の難しさ理解して、伊藤さんから届くリンゴやプラム、洋ナシ、サクランボといった作物を、大切に食べて行きたいものです。
※写真は腐らん病の治療でビニールを巻きつけているりんごの木です。