今から40年近く前、「あいのう野菜の会」という産直グループで働いていた当時、グループの生産者の「野菜セット」を始める事になりました。その時、代表の片井さんはセットの名前を「あいのう旬菜セット」と名付け、その名前を段ボールに大きく印刷しました。片井さんは「『旬菜』とは旬にとれる野菜という意味を表す造語なんだ。『野菜セット』ではなく『旬菜セット』なんだよ。私が考えついた言葉なんだけど、いいだろ?」と、うれしいそうに私に話されました。今、この「旬菜」という言葉は、普通にあちらこちらで見かける言葉になりました。「あいのう旬菜セット」は消えていく運命をたどりましたが、「旬菜」という「言葉」は暮らしの中で「コトダマ」となり、これからの時代も「旬菜」という言葉に込めたその思いは私たちの中に受け継がれていく事でしょう。
先週、「くらしば」の案内をお配りしたところ、「集まっていったい何をするんです?」と何人かの方に聞かれました。「『げんきの市場』の生産者の方の規格外の野菜や売れ残った野菜を池田さんと共に参加された方が一緒に調理して、それをみんなで一緒に美味しく食べるのが大きな集まりの流れです。その流れの中で、皆さんが『健康』や『社会』、『地球』の為に、暮らしの中でされている事をシェアして頂きます。『げんきの市場』に集う方々はそれぞれが社会の中で、素晴らしい事をされている事がホント多いんですよ。それらの話を聞きながら、それぞれが、実践できる事は実践して、出来ない事は感心して、それとは違うと思う事でも『そういう見方もあるんだな』とご自身の世界を広げるのに活用して頂ければ願います。討論をする場所ではありません。私たちが暮らしの中で未来を変える力をシェアする場所です。」と、お答えいたします。
「くらしば」についての野菜情報VOL.748を書きながら私自身も「健康」という言葉が「わかりづらいのかもしれない。」と思っていました。「健康」は「健康の為には命もいらない」というジョークもあるように、個人の欲望のようにとられる場合もあるからです。しかし、私自身が「健康」が地球の「健康」と同心円で繋がると気づいたのは佐藤先生の健康講座のお陰です。その中で私たちの「健康」は穀菜食をベースにした「食」が土台になります。そして、それと共に健康の中心にある「心」、健康を促す「動」、健康の根底となる「環境」という、「食心動環」の4つの世界を整えていく事により実現されるのです。そのどれもが「地球」の健康とは切り離せません。そして、自身の身体という宇宙(コスモス)の「健康」が整う喜びは、旬の野菜を食べた時に私たちの心が満される幸福感に似ています。その自身の喜びの延長線上に地球の喜びを重ねて行きたいのです。
「くらしば」は動き始めたばかりです。そして、「くらしば」は今までの「料理教室」や「何とか講座」ではありません。参加された方々が主役となり、作られていく「場所」なのです。それがどのように変化して行くかは、私も全く見当がつきません。ただ、この時代の中で、この豊かな日本という国の中で、台所や子育て等、暮らしの多くを担っている女性の方々が集い、目の前にある「暮らし」の中に、未来を変えていく力がある事に気づいて、その毎日が喜びと共により良い自身と地球の未来を創造する場所として、「くらしば」という集いが「コトダマ」になる事を夢に見ます。