安い食べ物を作る為に虐待をされている生命の実態 野菜情報VOL.717 令和6年8/18~8/24

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今週は野菜情報VOL.716でご紹介した「ヒトは食べ物でできている:双子で食を検証」という番組のサイドストーリーとしてクローズアップされていた工業型畜産業と漁業にフォーカスします。今、アメリカで消費されている牛肉の96%が工業型畜産により生産されています。そこでは牛はつながれたまま動く事を許されません。そして、とうもろこしや大豆といった高カロリーの餌で早く太らせます。この食肉用の牛全体の総重量は17億トンで、地球上のそれ以外の陸上の生き物の全部の重量の10倍にもなります。そして、その牛たちが出すゲップによるメタンガスが地球の温室効果の大きな要因になっています。世界中の運輸業による温室効果ガスは全体の14%なのに対して、農業全体(主に牛のゲップ等)の温室効果ガスは31%にも達しています。そして、牛肉450g生産する為には11kgもの餌が必要であるという報告もあります。このように牛の工業型畜産は生産性が低く、地球の環境破壊を促進しています。そして何より牛の生命を冒とくしています。

 工業型養豚場が乱立するノースカロライナ州北部では、一面ピンク色の豚の糞が未処理で貯めている貯水池が点在しています。豚1頭につき毎日、5ℓの糞尿が排出されます。工業型養豚ではそれを池にため込むだけでなく、池が溢れそうになり貯めきれなくなった豚糞は、隣接している敷地にジェット式空中散布機で90m飛ばして飛散させます。この散布が30年以上続いており、敷地に隣接している家の住人から「遊びに来た孫たちが『雨が降ってきた』というので外に出ると、飛ばされた豚糞でした」と、隣接して暮らす苦悩が語られています。この豚糞の空中散布では隣接した家では、豚特有の細菌により家屋自体が腐り、異臭を放つなどの被害を受けています。

 次に登場した工業型畜産による平飼養鶏農家では1棟に400万羽以上を飼育しています。一応、平飼いの鶏肉という事で健康的なイメージで販売されていますが、実態は違います。1羽につきノート1枚の面積に詰め込まれた鶏たちは、アンモニア臭、ホコリ、フン、舞い飛ぶ羽の中で育ちます。その鶏たちは遺伝子操作されて胸の部分が大きくなっており、肉の成長に内臓や骨の成長が追い付かず、2本の足で歩けなかったり怪我のまま詰め込まれ不自然に飼育されています。それはまるで、苦しむために生まれてきたようです。この極めて不自然な飼育状態で飼育されていると病気になりやすく、1羽が病気になると直ぐに蔓延するために予防的に抗生物質が使われています。また、少量の抗生物質を家畜に定期的に投与すると成長を促進させ大きくなる効果もあり、不潔な環境を補う事もでき一石二鳥で使われます。その量はアメリカで年間に人に使われる量の8倍以上にもなります。そして、肉を食べ体内にその抗生物質を摂り続け、その結果、薬剤耐性菌が人類の未来を脅かしています。アメリカでは1年に2300万人が発症し、2万3千人が死亡しています。

 漁業も養殖や大規模漁業が漁業全体の75%を占めており、取材した鮭の工業型養殖では海洋汚染を作り、それが、天然魚を絶滅に追いやっていました。このように生命を育む農業や魚業を経済性という物差しで規模を大きくすればする程、動物福祉を無視したまま命を育む食べ物のとは別のものを生産する事になります。そして、家畜も地球も私たち人間の欲望により虐待をされています。

 

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