生命」の同心円が広がるこの世界の中で紡いでいきたいもの 野菜情報VOL.644 令和5年2/19~2/25

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 なぜ、私たちは毎日ごはんを食べなければならないのでしょうか?

 そして、その食べたものは私たちの身体の中でどのようになるのでしょうか?

 私たちは「人間と食べもの」の関係を「自動車とガソリン」の関係に置き換えて考えてきました。「食べものは車を走らせるガソリンのようなもので、全てエネルギーとなり燃やされ、大便になり体外に排出される。そして、私たちは毎日その生命活動を維持する為にごはんを食べ続けるのだ」と、しかしそれは事実ではありません。それを発見したのはドイツのルドルフ・シェーンハイマー博士であり、博士が1930年代に行なったねずみのエサに目印をつけておこなった実験でした。

博士は、ネズミが食べるエサに顕微鏡で見ると赤く見える目印をつけて、食べ物が体内に取り込まれていく体内変化を追跡しました。すると食べものがネズミのエネルギーになるのは三分の一程度であり、残りの大部分はねずみの頭から尻尾の先にまでくまなく体内にちらばり溶け込み、ネズミ自体がピンク色に染まりました。つまり未来永劫、変わらないと思いこんでいた私たちの肉体は、実は分子レベルでは常に古い細胞と新しい細胞が入れ替わっていることがわっかたのです。

 これを「自動車とガソリン」で例えるなら、自動車に注ぎ込まれたガソリンが燃やされるだけではなく、同時にタイヤになったりハンドルや座席などの一部になったりするという事で、ガソリン自体がどんどん自動車を作り替えられていくという事です。私たちの髪の毛や爪や皮膚が新陳代謝により交換されていることは、なんとなく理解できるのですが、現実には骨や歯などのかたいものや脳細胞の中身に至る身体のあらゆる部分が例外なく入れ替わっていたのです。ちなみに私たちが排出している大便の主成分は食べかすではなく、私たちの身体で役目を終えた細胞たちです。

このシェーンハイマー博士の実験を著書「生物と無生物のあいだ」の中で紹介された福岡伸一博士は、私たちの生命は機械のような固体ではなく、流体として常に入れ替わりをつづけており、この「合成」と「分解」がバランスを保っている状態を「動的平衡」(どうてきへいこう)と名付けました。私たちは、このように自ら「分解」を繰り返し続ける事により、宇宙の大原則である「エントロピーの法則」の「秩序のあるものは秩序のない方向にしか動かない」という原則に逆らい、そして「合成」を繰り返す事により「生命」という秩序を守り続けているのです。

福岡博士は「エントロピーの法則」に支配されているこの宇宙の中で、「生命」とは「合成」と「分解」という「動的平衡」を繰り返すものであると定義されています。そして、このように「生命」の事を定義すると、「細胞」は「生命」であり、その集合体である「人間」も「生命」であり、個人が集まっている人間社会も「生命体」であり、人間と他の生物との地球全体もひとつの「生命体」と考える事が出来るのです。つまり地球は一つ一つ別々の物質(機械)が寄り集まった集合体などではなく、全ての「生命」が総合的な地球という「生命」との深いやり取りの中で、生命の代謝の持続的変化を維持しているのです。

「土の健康から作物を育て、私たちの健康を育て、社会の健康を育て、地球の健康を育てる」私たちは、「動的平衡」という同心円で広がりながら、「喜び」を紡いで行ければと願っております。

 

 

 

 

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