姿を消した「ブルームきゅうり」から見えてくる事とは… 野菜情報VOL.620 令和8/7~8/20

  

 かつて店先に並んで販売されているきゅうりの表面には白い粉がついてたんだ。ブルームと呼ばれる白い粉で、きゅうりの実が呼吸する時に自然に作り出す物質。この物質は糖類やカルシムが含まれる粉でもちろん食べてもまったく人体に害はないの。このブルームという粉できゅうり自身が表面を自らコーティングして、水分の蒸発を防ぎ、病原菌が感染するのを予防するのよ。店先に並んで売られているきゅうりにこの白い粉がついているのは新鮮なことを示す証でもあったんだよ。この白い粉が表面につくきゅうりの事を『ブルームきゅうり』と呼んでたの。

 この『ブルームきゅうり』が自然の生理で出すこの白い粉が、その頃社会問題になりだした農薬に消費者に間違えられて売りにくいという事で、このブルームという白い粉が出ない『ブルームレスきゅうり』というものがつくられたの。この『ブルームレスきゅうり』は同じウリ科の南瓜を台木(土台)にしてきゅうりを接木(つぎき)してきゅうりの木で育てる。そうすることでブルームと呼ばれる『白い粉』が出ない『ブルームレスきゅうり』が出来たわけ。それにより『ブルームきゅうり』という白い粉を出すキュウリは市場から姿を消したんだ」

 そして「『ブルームきゅうり』は白い粉でコーティングしながらキュウリのぶつぶつの穴で呼吸をしているのでヌカ床に入れるとそこから味がしみ込んでおいしく漬かるんだけど、『ブルームレスきゅうり』は白い粉をださないかわりにぶつぶつで呼吸しないので皮が固くてヌカ床にいれるとパンパンにふくれて美味しくない。皮も固いしね。『ブルームきゅうり』は皮も薄くて香りがあって、それに苦みが少なくて、食感もいいんだ。その上、病気や害虫にも強く育てやすいのよ。それなのに消費者に白い粉が残った農薬に見えるというただそれだけで消えていった。嘘のようなコレ、本当の話なんだよ」と、この業界に入って間もない私にその店主は教えて下さいました。それ以降、今でもスーパーや一般流通の中で「ブルームきゅうり」を見かけることはなくなりました。

 「《食》から《農》を計ると歪みや矛盾を生じますが、《農》から《食》を育むとそこには生命の喜びが生まれます」。

 これは「げんきの市場」が越谷に生まれた20年以上前から、私たちが消費者の皆様に一貫してお届けしたいものなのです。日本には四季がありその季節に育つ野菜たちは、単に滋味深く栄養豊かなだけではなく、夏なら夏野菜は身体を中から冷やし、取り過ぎる水分の流れを整えるという様に私たちをその季節に合うように整えてくれます。そうした四季折々、旬の野菜たちとのめぐり逢いを、料理研究家の辰巳芳子先生は「あの美味しさを待つということ」という含蓄のある言葉で語られています。けっして、私たちが目指す自然と真っすぐにつながる食卓は口当たりのいいことだけとは限りません(とくに異常気象の中では…)。それでも私たち「げんきの市場」は自然とつながる事により「生命を頂く喜び」を皆様にお届けしたいのです。それこそが、私たち人類がボタンを掛け違えたまま地球で生きる中で、この時代の中で私たちが取り戻すべき喜びなのだから…。

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