「農業消滅」の鈴木先生が描く 食糧危機を乗り越え持続可能な未来の姿 野菜情報VOL.604 令和4年4/17~4/23

 

 4月5日、「農業消滅」の著者の鈴木宣弘(すずきのぶひろ)先生の講演会に行ってきました。鈴木先生は現在、東京大学農学生命科学研究科の教授であり、農林水産省での実務経験も踏まえて日本の農政の失敗が招く「国会存亡の危機」を訴えられています。食料の確保は軍事・エネルギーと並ぶ安全保障の要であり、このまま農業従事者を苦しめる政策が続けば、日本は必ず飢餓に陥ると警告されています。

 現在日本の食糧自給率は38%で世界先進国の中でも低い値ですが、鈴木先生は13年後の2035年にはコメが11%、酪農で12%、青果物や畜産では1%から4%と現在を大きく下回る状況になると農林水産省のデータから分析しています。コロナ禍では世界の19カ国が食品の輸出規制を実施し、ロシアのウクライナ侵攻という局面で世界の食糧はさらに不安定になっています。私たちは自動車などの工業製品を輸出して外貨を稼ぎ、食料は安い食品を外国から調達すればいいと教え込まれてきましたが、鈴木先生は2008年の時に起きた穀物輸出大国の干ばつなどがまた起きれば間違いなく日本国民の飢餓が現実になる危険性があることを指摘しています。

 しかしこのような異常事態の中でも、日本政府の農業政策は方向転換することなく、米価の買い入れ価格が生産継続できないほどに値下がりして何も手を打たず、農業従事者を消滅に追いやる政策を進めています。そこには「食糧安保」への危機意識など微塵も感じられません。そうした背景には貿易自由化と密接に係わりながらアメリカとの2国間交渉などの見返りに日本農業を差し出す構図が出来上がっています。

 そして食料の安全性という重要な問題でも日本はアメリカに差し出しています。鈴木先生は「危ない食料は日本向け」として生産されている事実を、ホルモン剤漬けの肉や、グリホサートで枯らして収穫する小麦、GM食品(遺伝子組み換え食品)の輸入などの豊富な事例を挙げて説明されていました。例えば、アメリカでは2023年より消費者の食べものへの使用が禁止されることが決まっているグリホサートですが、日本政府はグリホサートの残留基準を小麦で6倍、蕎麦では150倍に緩めて輸入しています。さらにアメリカ産のレモンでは、日本では人体の危険性から使用禁止になっている農薬・防カビ剤(収穫後使用される)が使われていたために一度は輸入禁止をしたのですが、アメリカ側の猛烈な抗議を受け、「農薬」を「添加物」としてラベルに食品表示することで、規制からすり抜ける形で輸入を続けています。

 このような現実に対して、鈴木先生は、「アメリカの言いなりになって、武器を買うことだけが安全保障ではなく、食料こそが命を守る真の安全保障の要であり、『消費者を守れば生産者が守られる。生産者が守られれば消費者が守られる。さらに食糧で、世界を守れば必ず日本は守られる』という姿こそが、持続可能な未来へのキーワードになる」と話されていました。それは、今、毎日の実践の中で「げんきの市場」が生産者方々やご縁を得た皆様と共に描いている未来の姿です。

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