「ゲノム編集作物から見えてくる日本農業の危機」  野菜情報VOL.582令和3年10/31~11/6

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 9月にはゲノム編集されたトマトのオンライン販売が始まり、ゲノム編集トマトの苗の販売も10月11日より始まりました。そして、ゲノム編集ジャガイモは4月に屋外での開放圃場での試験栽培がスタートし、11月にはゲノム編集小麦の試験栽培が始まることが発表されています。またゲノム編集技術により肉厚に改良されたマダイが9月17日に厚生労働省で受理され、まもなく市販できるようになります。

 「ゲノム編集」は遺伝子の機能の性質を人為的に変化させる技術ですが、今までの「品種改良」と同様に遺伝子内の変化を応用するため、「ゲノム編集」は「品種改良」と同等技術として、それによって誕生する食品には「危険性の検査」も「表示義務」もありません。そのような状況の中で、日本は世界でも突出して、ゲノム編集栽培へと突き進んでいます。

 「ゲノム編集」食品には研究者の当事者たちでさえ予想していなかった変異(オフターゲット変異)が起きる可能性や、これまで存在してきた食品の中に含まれるアレルゲンとは異なる新しいアレルゲンが生まれる可能性などが考えられますが、推進派からは治験によるものではなく「推察される」「判断される」というあいまいな表現の中で否定されています。また、厚生労働省で開かれたゲノム編集マダイの専門家会議では一部の専門家から他の魚と交配して生態系に及ぼす影響への懸念が指摘されましたが、開発者は「ゲノム編集マダイは寿命が短くすぐに死ぬから生態系への影響は及ぼさない」という回答でした。

 2008年の食糧危機をきっかけに国連は2010年頃から食の政策に関しては民主化が進められ、2013年に小規模家族農家を基盤とするアグロエコロジー(生態系を守り、それを活用する農業)推進が明確になっていきました。しかしその世界潮流により不利益を受けるバイエルン(モンサント)を中心とする4大遺伝子組み換え企業や住友化学によって構成された農薬ロビー団体はCLI(CropLife International)を組織して巻き返しをはかり、2020年10月2日、国連食糧農業機関(FAO)と提携強化の覚書きを結びました。そして国連食料システムサミットでは「食料システム」を儲け先として目を付けたかの巨大資本たちがまるでFAOを飲み込む勢いで、スピード・効率・大規模化という農業変革のスローガンを掲げ、「ゲノム編集」などの新しいテクノロジーを使って農業ビジネスに参入してきています。

 今、日本の稲作に危機が訪れています。農協の買い入れ価格が大暴落しているのです。どんなに大規模農家でもお米を60kg生産するのに1万円の原価が発生いたします。しかし今年は農協の買い入れ価格が現時点ではそれを大幅に割り込んでいるのです。米をつくれば作るほど赤字になる異常事態であり、農業の放棄を促す状況なのです。もしこうした状況でコメ農家が農業を放棄すれば、そこで利益を得るのは「食料システム」という新たなる利権を手に入れたい巨大資本です。コロナ禍の中で世界の穀物輸出国19か国が禁止借置をとりました。生産者の仕入れ価格を守る事は、長い視点で見た時に消費者の皆様を守る事になると考えています。そして、それが皆様の生命や尊厳、未来を守る事につながります。そのような思いで私たちは「げんきの市場」を運営しています。

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