「モリ―先生との火曜日」(ミッチ・アルボム著 NHK出版)という本があります。著者のミッチは、たまたま見たテレビからかつての大学時代の恩師のモリー先生がALSを患い間もなく死を迎える状況であることを知ります。そして、16年ぶりにモリー先生に会いにご自宅へと向かい、それ以降、毎週火曜日に訪ねて、人生について、愛について、死について、介護されることについてなど様々な人生のことを交わしていきながら、恩師の考えを聴くことになります。そしてその対話は14回目の火曜日、モリー先生の死と共に終わります。
ALSは、車椅子の科学者スティーブ・ホーキング博士が患っていた病気で身体中の筋肉が脚の方から動かなくなり、最後は呼吸が出来なくなり、死に至ります。現代の医学では治療法がなく、患者は衰え呼吸が困難になり死が近づいていく事を日々に味わう過酷な病気です。死に近づいていく教授と元生徒の対話の中で、人生の終わりが見えたときに、大切なのはお金でも名誉でもなく、本当に人生にとって大切なものは何かという事を教えてくれます。以下、私の心に深く響いた、モリ―先生の言葉をいくつか抜粋いたします。
●人生に意味を与えるのは人を愛すること。自分の周囲の社会に尽くすこと。そして自分に目的と意味を与えてくれるものを創りだすこと。
●いずれ死ぬことを認めて、いつ死んでもいいように準備すること。そうしてこそ、生きている間をはるかに真剣に人生に取り組むことができる。
●みんなまちがったものに価値をおいている。それが人生への幻滅につなげている。
●人に与えることで自分が元気になれるんだよ。自分の時間を与え、悲しい思いをしていた人たちを微笑ませる事が出来れば、私としてはこれ以上ないほど健康になった感じがするんだよ。
私たちの健康は「食・心・動・環(環境)」の4つ力で育まれます。長年、「げんきの市場」で健康講座を開催していただきました薬方堂の佐藤成志先生は多くの療養中の方たちとの出会いの中で「朝目が覚めただけでも有難い、息を吸って吐いてそれだけでも有難い。そうした奇跡の上に私たちの毎日がある。その感謝の心が健康を育てる」と話されています。
托鉢家として多くの人を導いた石川洋先生は、寝たきりで介護が無ければ生きられない方から「私には生きる意味がないのでは?」という質問を受けた時に、「あなたが生きているだけで励まされ、その笑顔に救われる人がいます」と答えられています。そして、「生きる覚悟」という言葉を私たちに残されています。私たちの生は必ず終わりの時を向かえます。それは人類史上、誰一人逃れることは出来ません。ただその最後の時にまで、私たちはいただいている生命に感謝をして、ご縁を頂いた皆様に少しでも喜びを届けられるような生き方が出来ればと思います。そして全ての生命に健康な未来が訪れる一助になればと願います。