今、動物園に行けば見ることが出来る動物たちのほとんどが絶滅危惧種であるという異常事態を迎えています。メキシコ国立自治大学で生態学を研究するヘラルド・セバジョス・ゴンサレス教授によると、2001年から2014年にかけて世界では約173種の脊椎(せきつい)動物が絶滅しました。これは通常考えられる絶滅速度の25倍のペースということで、さらに今、生物全てを換算するとサンゴ類の1/3、淡水産貝類の1/3、サメやエイの1/3、哺乳類の1/4、爬虫類の1/5、鳥類の1/6、植物の1/2が地球から姿を消そうとしています。
この衝撃的な事実は、「6度目の大絶滅」(エリザベス・コルバート著・2014年刊)に書かれています。地球には隕石衝突、火山活動、氷河期到来などの惑星規模の大災害が起き、5度の大量絶滅が起き多くの種が消滅しました。そして今、新たな大絶滅の時を迎えています。この本の帯の中で分子生物学者の福岡伸一博士は「私たちは、生物種の大絶滅を、いま自らの手で引き起こしている。しかも、その絶滅の中に自らが含まれていることを気づかないまま、もはや引き返すことのできない道を進んでいるのだ」とこの本を紹介しています。
第2次世界大戦を機に大量生産や核兵器の開発・実験が本格化し、さらに、人口爆発なども進行する過程で、グローバル経済が進み、それと同時に気候変動や熱帯林の減少、生物多様性の喪失、海洋汚染といった環境破壊が深刻化していきました。今や人間活動が地球に及ぼす影響は、かつてと比較できないほど甚大なものになっています。 人類が有するこの過度な影響力を、「完新世」に続く新たな地質時代として位置付けられようと提唱したのがオゾンホールの研究でノーベル化学賞を受賞したオランダ人化学者のパウル・クルッツェン氏で、それが「人新世」(じんしんせい)です。
イスラエルのワイツマン科学研究所は、2020年12月9日付の学術誌「ネイチャー」の中で「人新世」の到来を象徴する衝撃的な推計を発表しました。地球上の生物の総重量は約1兆1000億トンですが、2020年内で地球上にあるコンクリートや金属、プラスチックといった人工物の総重量が、生物の総重量を上回った可能性があるというのです。20世紀初頭には、生物の3%に満たなかった人工物の総重量は指数関数的に増加し、1兆トンを超えました。さらに20年後には現在の約2倍になるという驚愕のデータです。
歴史作家の司馬遼太郎は、1989年に小学6年生の子どもたちの教科書のために「21世紀に生きる君たちへ」という文章を残しています。その中で「人間は、自分で生きているのではなく、大きな存在によって生かされている。」と指摘し、「この自然への素直な態度こそ、21世紀への希望であり、君たちへの希望でもある。そういう素直さを君たちが持ち、その気分を広めて欲しいのである。」と子供たちが大人となり生きる21世紀のへの思いを綴りました。「げんきの市場」は、生命の源であり、日々の生活の場でもある「食」と「農」とのつながりの中で、皆様と一緒に私たちの時代の明日をかえていければと考えております。