国内で「ゲノム編集」されたトマトが「初承認」され、今秋には国内で販売がされることが決まりました。筑波大学が開発した血圧の上昇を抑える成分の「GABA」(ギャバ)が通常のトマトの5倍多く含んでいるトマトです。ほかにも、筋肉量を抑える機能を壊して肉量を多くしたマダイ、食中毒の原因となる毒素の合成を抑えたじゃがいも、収穫増をねらった稲などが「ゲノム編集技術」を使って国内研究機関で研究されています。これらはまだ栽培試験が行われている段階ですが、間もなく国内に登場してまいります。また、アメリカではすでにゲノム編集大豆が栽培され、それを原料とする植物油がレストランなどで使われ、一部はすでに日本に輸入されて私たちが口にしている可能性があります。
「遺伝子組み換え」が遺伝子に別の生物の遺伝子を取り入れて性質を変化させるのに対して、「ゲノム編集」は遺伝子の機能を止めたり変えたりして性質を変化させる技術です。遺伝子内の変化を応用することは、今まで品種改良に使われていた技術でした。それを人の手で直接、遺伝子に効率的に働きかけます。それゆえ、「ゲノム編集」は「品種改良」と同等技術として、それによって誕生した食品には「危険性の検査」も「表示義務」もありません。このままいけば数年後には「ゲノム編集食品」が溢れ、日常の中で知らぬ間に私たちは口にしていることでしょう。
EUではEU司法裁判所の判断により「ゲノム編集食品」を、「遺伝子組み換え食品」と同等に同じ規制をすることになっています。現在、世界で「ゲノム編集食品」の問題点が全く指摘されずに進んでいるのはアメリカや日本などの少数の国です。「ゲノム編集食品」による環境や人体へ悪影響はまだわかっていませんが、ゲノム編集とは違うものの、遺伝子の働きを止める技術を使った作物が開発されていて、当事者たちでさえ予想していなかった変異(オフターゲット変異)が起きた例があると、かつてげんきの市場でも講演していただいたフリージャーナリストの天笠啓祐氏は指摘されています。
「かつて米国企業のシンプロット社が開発したジャガイモの例です。RNA干渉法という技術を使い、特定の遺伝子の働きを阻害し、発がん物質アクリルアミドの低減と、打撲によって生じる変色を抑制したのです。それで結果的に何が起こったのかというと、このジャガイモの病気への抵抗力が奪われた上に、AGESという、もともとなかった新しい毒素が生まれました。この事実は、開発者の内部告発によって明らかにされました。遺伝子を操作して壊すという意味では同様なゲノム編集でも、このような弊害が出ることも考えられるのです」(天笠氏談)
遺伝子組み換えの技術が誕生して20年がたち、多くの問題点が見えてきました。ゲノム編集技術はさらに最近に誕生した技術です。それ故にオフターゲット変異についても充分に検証をされておらず、その安全性は未知数です。食は直接、私たちや子供たちの生命に影響を及ぼします。決して自然ではない不自然な形で人間のエゴにより遺伝子操作をする以上、慎重に「ゲノム編集食品」に向き合っていかなければ私たちの生命を守る事は出来ません。