消費者の願いから生まれた低温殺菌牛乳 野菜情報VOL.705  令和6年5/12~5/18

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牛乳を63℃の温度で30分間殺菌処理をする製法をパスチャライズド牛乳と呼びます。東毛酪農で行われている牛乳の製造方法です。現在、一般市場に出回っている牛乳の90%以上が120~130℃の超高温で2~3秒で殺菌する「超高温殺菌」という製法でつくられています。そして、東毛酪農でやっている「低温殺菌」(63~65℃で30分殺菌)と「高温殺菌」(72℃以上で15秒以上殺菌)の2種類の製法でつくられた牛乳をパスチャライズド牛乳と呼んでいます。日本以外の世界中でフレッシュミルクと呼ばれている牛乳はこのパスチャライズド牛乳のみで、チーズやバターはこのパスチャライズド牛乳でしかつくる事が出来ません。

 日本でパスチャライズド牛乳として販売されている多くの牛乳は72℃以上で15秒以上殺菌する「高温殺菌」のものです。効率よく大量生産してコストを下げるにはその方が有利なのですが、東毛酪農は63℃30分で作り続けています。そのことを東毛酪農さんにお伺いすると「例えば63℃と65℃の2℃の殺菌温度の違いでも、牛乳のたんぱく質の熱変性の違いがあります。熱変性とはアミノ酸の立体構造で出来ているたんぱく質が、殺菌温度が上がる事によって壊わされていってしまう事です。赤ちゃんがミルクを飲むとそれが胃で固まり、その栄養分が体中に運ばれていくのですが、本来の牛乳も同じように胃でヨーグルトのように固まり、ゆっくりと消化吸収されて行きます。それが、熱変性したたんぱく質は固まらず、直接、腸へ流れ込んでしまいます」。

 この東毛酪農の63℃という最低限の低温殺菌を可能にするのが、牛を飼っている27戸の東毛酪農の指定農家の方々の徹底した衛生管理です。食品衛生法上、原料乳の細菌数は400万/ml以下ですが、東毛酪農では2万/mlという厳しい基準値を設けています。その為に、牛の健康を維持させるための食事や運動場などの飼育環境整備はかかせません。そして、毎日の原乳のサンプリングと月6回の検査を実施しています。一般の基準をはるかに超える厳しい基準での原乳づくりを務め、「生乳本来のしぼりたての美味しさをそのままに届けたい」という思いを実現しています。

 このような東毛酪農の思いはノンホモジナイズドという製法にも表れています。ホモジナイズとは、牛乳に圧力をかけて乳中の脂肪球を砕いて小さく均質化する事です。これは超高温殺菌する工程で、均一に短時間で殺菌するのに必要で、同時に超高温殺菌中に配管の中で乳脂肪が固まらないようにする為の工程です。しかし、東毛酪農は牛乳に圧力をかける事は、牛乳事態を壊していると考え、乳質を傷めないノンホモジナイズで生産しています。こうして出来た牛乳は静置すると上部にクリームラインが出来ます。牛乳本来のクリームで、夏は薄く冬は厚くなります。乳質事態も夏は牛の水分補給が高いのでアッサリと、そして冬は逆にコクがあり、季節の変化を感じる牛乳です。

 この東毛酪農のパスチャライズド牛乳は消費者の「搾ったままの生乳の良さを生かした安全低温殺菌牛乳を生産してもらえないか」という声が発端になり、そうした消費者の方々との話し合いをへて、1982年より生産を開始致しました。そして今も真面目に本物の牛乳を守り生産しています。

 

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