吉川の生産者の吉澤さんに大変興味深いお話をお聞きいたしました。吉川市の農協で、ハウス栽培のJAS有機小松菜と露地栽培の慣行栽培の小松菜との栄養価を分析したところ、慣行栽培の方が高かいという結果が出たそうです。この事実は一瞬、驚きの結果のように思えるのですが、実は妥当な結果です。ハウスの中で促成栽培された小松菜と自然界の中で時間をかけて土の上で育った小松菜では、たとえ慣行栽培だとしても栄養価が高いという事でした。
このような栽培方法と栄養価の関係を「データが語る 美味しい野菜の健康力」(丸善出版平成24年刊)ではクレソン、大葉、バジルの3種類の野菜の露地栽培と水耕栽培で比較しています。これらの野菜は家庭菜園なら露地栽培でつくられますが、一般に販売されているものの殆どは水耕栽培です。3種類の野菜のビタミン含有量を露地栽培と水耕栽培(植物工場)とで比較しましたところ、露地栽培の野菜はクレソンでは水耕栽培の約10倍(食品成分表値の4倍近く)、大葉では水耕栽培の約3倍強(食品成分表値の約2.5倍)、バジルでは水耕栽培の約2.5倍(食品成分表値でも約2.5倍)ありました。露地栽培の方が栄養価が高くなるといという事は歴然としています。
同様に同じ露地栽培でも旬の野菜とそうでないものとは栄養価の違いが出ます。例えばほうれん草では、旬の冬にとれたものと、夏のものではビタミンCの含有量が約3倍の差があります。冬の寒さの中でほうれん草はじっくりと太陽を浴びて光合成を行いじわじわと栄養分を蓄えていきます。ところが、太陽が照りつける夏季では、その暑さからホウレン草も水分を欲してどんどん水分を吸収し、促成栽培の状態になります。旬の露地栽培こそ本来の滋味あふれた野菜に育つのです。冒頭の慣行栽培の小松菜は旬の露地栽培であり、今回の結果からJAS有機栽培が一概に栄養価が高い野菜であるという事は言えないという事実です。しかし、断じて有機栽培が「ダメ!」というのではありません。「有機農産物」をひとくくりにして評価することは出来ないという事なのです。
私たちげんきの市場の地場の生産者の野菜の多くは、旬に育てる露地栽培の野菜たちです。しかもそれぞれの農法で土づくりをしています。その土の中には多くの微生物や細菌がいて(例:有機栽培は1gの中に1億以上の微生物、10億以上の細菌がいるといわれます)、その他にカビの仲間、アメーバなどの原生動物、ミミズなどの土壌動物など、驚くほど多くの生命が存在します。そして、野菜が光合成でえた炭素をタンパク質や糖、アミノ酸などに変えて根の分泌物として根から排出し、それが微生物の栄養源や細菌の代謝促進となるために、根の周りに微生物や細菌が集まり、根の周りに根粒微生物群が豊かな生命圏をつくります。そして、その中で吸収しづらいミネラルが微生物や細菌に分解され、今度は植物の根がそれを吸収し、生命力あふれ栄養価が高い野菜に育ちます。
このように旬の露地栽培で育てた野菜は栄養価が高いというだけではなく、機能値(波動値→生命力)も高く、ファイトケミカル(抗酸化力や免疫力を上げる)の含有量も多くなります。またそれらが無農薬栽培なら「サルベスト―ル」という「ガン細胞特有の酵素と反応し抗ガン物質に変化する植物由来の化合物」が多く含まれている事が分かっています。そして食卓を季節で彩り、身体を季節に合わせて整えてくれます。野菜を育てるという事は、生命(いのち)を育てるという事であり、それには目の届く範囲があるのです。「げんきの市場」の生産者方のように小規模な日本的農業で何十年も土づくりをして育てている野菜たちこそ、生命を養う価値がある食べものなのです。