ここ最近日本に来る台風では「これまでに経験したこのない…」とその凄まじさが表現され、全国で線状降水帯が発生し、甚大な被害が発生しています。パキスタンでは例年の10倍以上の降雨により国土の3分の1が水没し、「国家非常事態」を宣言しています。インドでは今年だけでも200日間も熱波が続き、アメリカやヨーロッパ、中国など世界各地で記録的な干ばつや集中豪雨に見舞われています。世界が終末にむかっているかのように思わせる異常気象ですが、2022年5月、世界気象機関(WMO)が温室効果ガス濃度、海面上昇、海水温度の上昇、海洋酸性化という4つの主要な気候変動指標が2021年に最高値を更新したことを発表いたしました。
この4つの指標の中でも異常気象の原因と密接に関係しているのが、海水の温度の上昇であると指摘しているのがNASAのゴダード宇宙研究所元所長、ジェームズ・ハンセン博士です。ハンセン博士の調査によると、100年間で海水温度の上昇が世界各地で確認されており、平均で0.5度上昇し、それにより海から蒸発する水蒸気の量も増えるので、それが直接異常気象につながっているとのことです。そして、海水温の変化で、大気は影響を受けて、大規模な異常気象を引き起こします。水温の上昇による異常気象の影響は、「夏の暑さと冬の寒さが激しさを増す」、「各地域で見れるはずのなかった現象が起き始める」という2つの大きな現象を引き起こします。そして、そうした現象は「遠隔影響」(別名『テレコネクション』)と呼ばれる世界の離れた地域で、「水害」・「夏のゲリラ豪雨」・「干ばつ」・「夏に雪がふる」といった異常気象を影響しあい引き起こします。
このように私たち人類が直接地球に影響を与えているこの時代のことを、新たな地質年代として「人新世」(じんしんせい)と呼びはじめています。地層の堆積物の重なりや含まれる化石生物の進化から時代を区分することを地質年代と呼びますが、最後の氷河期が終わった約1万年前から今まで続いていた「完新世」はすでに終わり、新しい地質年代に入っているという説が、2000年にオゾンホール研究でノーベル賞を受賞したパウル・クルッツエン博士によりに提言されました。それが「人新世」なのです。20世紀の始めには生物の3%に満たなかった地球上にある人工物(コンクリートや金属)が1950年前後の人類の経済活動以後、うなぎのぼりに増えていき、2020年には人工物の総重量が生物の総重量を上回ったことをイスラエルの研究チームがネイチャーに発表しました。そして、20年後には人工物が今の2倍になると予測されています。
2030年までに持続可能でより良い世界を目指すSDGs(持続可能な17の開発目標)が国連サミットで加盟国の全会一致でされています。最近マスコミでやっているSDGsのキャンペーンで良くいわれているのが「自分の身近の事で出来ることから始めましょう」というフレーズです。
「大にして転定(てんち)、小にして男女(ひと)は同一の原理にもとづく」
安藤昌益
江戸時代の安藤昌益は地球環境と人体の汚染が同時に起きることをすでに予見していました。地球と人体は同じ「生命」であり同じ論理で生成され、汚されます。私たちの「自然に沿った健康を育む食卓」こそ、「人類」と「地球」との最初のボタンの掛け違いを正すことが出来ます。自分自身の「健康」と同時に地球の「健康」を育てる毎日こそ、素晴らしいSDGsだとは思いませんか?