少し前のヤフーニュースで「2040年には世界の肉の60%が『培養肉』に」というレポートが上がっていました。「培養肉」とは例えば鶏の羽などから幹細胞を体外に取り出し、その細胞を培養することで肉状の物質を作るといったもので、人間が遺伝子を設計して合成生物を作る技術です。
将来に不足することが予測されている食肉問題や、工業型畜産のアニマルウエア(家畜の福祉)の観点から、SDGsの理念と共に「持続可能なたんぱく質」として取り上げられています。現在、この技術にはビルゲイツをなどの大富豪や世界の多国籍企業がこの産業の独占に向けしのぎを削っています。はたして「培養肉」は、本当に私たちの「食の進化」と呼べるものなのでしょうか?
この「培養肉」はバイオリアクター(生物反応槽)の中で幹細胞に微生物が必要な栄養を外部から提供してつくられます。その供給源となる例えばサトウキビが遺伝子組み換えにより巨大プランテーション(大農園)で栽培されることも充分に考えられます。そして自然の生態系から完全に切り離された工場の中で新しい技術により生命として合成しつくられる「食べもの」の安全性は全くの未知です。ただ、それ自体が異常に「不自然な食べ物」であるという事実のみが浮かび上がってきます。そして、この技術自体は究極の遺伝子組換えとも言われています。
「げんきの市場」で長年、食事療法の講習会をお願いしていた佐藤成志先生は、かつてアフリカのタンザニアへ要請を受け食事指導で行かれた時、現地にある昔から主食にしていた日照りに強い雑穀を中心として地域に根ざした「穀菜食」を指導しようと致しました。しかし、現地の援助をとり仕切っている欧米人はあくまでも、家畜を飼い、餌になるトウモロコシなどの飼料を輸入し、それで育てた家畜を食べるという欧米型農業を推進に固執し、結局は意見が対立したまま任務半ばで日本に帰られたそうです。1㎏の牛肉をつくるのには8㎏の穀物が必要だと言われているのにです。
佐藤先生がご指導をしようとした「穀菜食」とは人間の「食性」にあわせた食べものです。「食性」とはコアラがユウカリを、パンダが笹の葉しか食べないように、生き物は本来食べるべきものが決まっているというものです。そして、それは肉食動物には犬歯しかなく、馬や牛と言った草食動物には門歯しかないといったように、その生き物がもつ歯の種類によってわかります。人間の場合は歯の約6割が臼歯であり、穀物を中心に食べる生き物です。そして、約3割が野菜などを食べる門歯で、残りの約1割が肉や魚を噛み砕く犬歯です。人間は「穀菜食」中心の雑食動物なのです。