新たに大分県の茅野文三(かやのぶんぞう)さんの干椎茸「乾とよのこ」の取り扱いを始めます。茅野さんが椎茸を育てているクヌギ原木の「ほだ場」は大分県豊後大野の山の標高400m~500mの所にあります。ここは遠くに九州山地の尾根の祖母傾山、阿蘇の外輪山、五岳、九重連山が望める大自然が豊かな場所です。大分県は日本一の椎茸の産地で、最高級品の干椎茸「冬菇(どんこ)」というブランドを作りましたが、茅野さんはそれだけでは満足せずにさらにその上の干椎茸を目指している3代続く椎茸農家です。
「小学生の頃から親の椎茸栽培の手伝いで山の中に入っていました。杉林に囲まれた椎茸が育つ『ほだ場』の景色が大好きで、それに椎茸を食べるのも大好きだったので、自分が親の後を継いでつくるなら、大分という一大産地の中で、誰よりも美味しい椎茸をつくりたいと思ったんです。」
茅野さんはご自身の干椎茸に「乾とよのこ」という名前をつけて、産地の市場でもご自身の干椎茸を見分けられるようにしています。「椎茸が元々好きな事もあって、色々な品種を食べつくして今の品種にたどり着きました。一般に栽培されているのは春と秋の温暖な時期に育つ沢山量がとれる品種なのですが、私の品種は晩秋と早春の寒い時期に育ちます。乾燥に弱かったり、栽培も難しく生産量も少ないのですが、育つ椎茸は肉厚で柔らかく旨味と香りが豊かです。」
その旨味と香りが豊かな椎茸を25度から28度の低い温度で旨味成分が逃げないようにゆっくりと乾燥させながら、普通の干椎茸農家の2倍の時間をかけてゆっくりと干椎茸をつくります。この乾燥法を取り入れている農家は全国の原木栽培椎茸農家の中でも2割にも満たないとの事です。
「元々干椎茸はかつお節と昆布と共に『日本の三大だし』とも呼ばれ、料理には欠かせない食材でした。日本料理独特の旨味のもとになるこの3つの味はそれぞれを2つ以上掛け合わさることで、さらにその料理の味わいを深めていきます。そんな料理に欠かせない干椎茸が経済効率優先で美味しくないものばかりが増えてしまい、いつの間にか料理に使われなくなってしまったんです。」茅野さんは干椎茸の消費が激減した日本の現状の中で、もう一度その奥深い味に気づいてもらい、本来の日本の食卓の美味しさを取り戻すきっかけになることを心から願われています。茅野さん曰く、椎茸の戻し時間は今までより短く、味噌汁や煮物なら戻さずにそのまま使う事が出来るということです。ぜひ日本料理に留まらずに色々な料理に挑戦して、干椎茸をお楽しみください。茅野さんの「乾とよのこ」は、まさしく心を豊かにする美味しさを食卓に育てます。