「他の人の家の雑草を貰いに行きたいくらいだよ」。私たち「げんきの市場」がレジェンドと呼んでいる群馬の宮田さんがそんな冗談のような話を先日電話で話されていました。「有機質から頭が離れて、ようやく色んな苦労がなくなったよ」とうれしそうに話を続けられました。意味不明な私に「畑に生えた雑草を畑に戻すことで理想的なアルカリ性質の発酵型土壌になるんさあね。化学肥料は最も悪い典型だけれど、有機質も結局は畑を酸性化に向かわせてしまう。それが、畑に生えている雑草を緑肥にするとアルカリ性質の発酵型土壌になるんだよ。自然というのものは全く無駄がない。そこにあるものをまた戻すだけでよかったんだあね」と嬉しそうに説明してくださいました。アルカリ性質の発酵型土壌ではより一層、病気や虫がつきにくくなり生命力にあふれた野菜になるようです。
今から5年前、地場の生産者の方たちと一緒に群馬の宮田さんの畑に農場研修におじゃま致しました。当時、宮田さんは見学している私たちにご自身の畑の事を「発酵土壌(有用菌が活躍する発酵状態)による混生型(多種多品目)栽培」といい「生物多様性に習い、もみ殻や竹の粉などいろいろな材料を複合的に発酵した堆肥を入れた畑で、雑草と一緒に作物を育てると、土中の微生物が草の根の周りにびっしり集りそれが豊かな土をつくるんよ」とはなされていましたが、その時、すでに40年以上続けられてきた有機農業でありながら「今いちから有機農業を勉強しなおしているんだ」とも話されていました。
宮田さんは、幼少の頃より体が優れず、ひ弱であったことから、食べものと健康との関係について学び始め、そして1971年に有機農業に出会い、さらに微生物生命圏を意識した農業技術を学びながら慣行栽培には決して負けない生産性の確立、健康を実現できる抗酸化レベルの高い作物生産をご自身の課題として取り組んでこられてきました。実際、畑見学をさせていただくと、どこの土壌もフカフカで、これから作物を植えるために綺麗に耕した畑の土壌はコロイド状態(養分を保持するポロポロとした小さい土のかたまりで、豊かな森林の土の状態)になっていました。それでも、さらに作物のレベルを上げるために努力を惜しまい宮田さんの姿こそ、まさに私たちが「レジェンド」と呼ぶ所以です。
以前、宮田さんに「今、世間にはいろいろな農法がありますけど、どの農法が一番良いと思いますか?」とお尋ねしたことがあります。その時、宮田さんは「盆地もあれば高台もある。赤土もあれば黒土もある。気候も違う。どの畑もみんな条件が違っているんさあね。みんな俺のやり方(農法)が一番だと言いたがるけど、自分の畑でいい作物をつくれるやり方が一番いい農法だよ」と教えていただきました。農法の違いによりブランド化しやすい自然食品業界の中で、私の中心の一つにさせていただいる言葉です。
現在「げんきの市場」には、毎年、大好評の「レジェンド宮田さん」の南瓜が並んでいます。宮田さんの人生が凝縮された南瓜の味を、是非一度ご賞味ください。そんな宮田さんの農業のお話を地場の生産者の方々と一緒に聞く機会を11月頃に企画できればと考えています。乞うご期待を!