歴史小説家の司馬遼太郎は、1989年に小学6年生の教科書のために書いた「21世紀に生きる君たちへ」という文章の中で、未来への熱い思いを残しています。「20世紀はある意味では自然への恐れが薄くなった時代だと言っていい。おそらく自然に対して威張り描いていた時代は21世紀に近づくにつれて終わっていくに違いない。人間は自分で生きているのではなく大きな存在によって生かされている。この自然への素直な態度こそ21世紀への希望であり、そーゆー素直さを君たちが持ち、その気分を広めて欲しいのである。」それは歴史を見続けた作家の今日への予言でした。
21世紀に入り、強まる自然災害の中で、私たちの世界に新型コロナという地球規模のパンデミックが訪れました。そして、感染拡大の波が広がる中で、私たちは「生命優先」か「経済優先」か、そんな問いが世界中の中で日々繰り返され、私たちの未来が揺さぶられました。そうした中で、マサチューセッツ工科大学教授ダロン・アセモグル博士は「今、私たちの未来に必要とされているのは現在の暮らしを続けていきながら社会や環境への影響の仕方を改善していく道としての社会規範の創造。それは市民社会の中で人が人に行動変容を促す事の出来る社会規範が必要になっている」と、絶望の未来を希望のあるものに変えていく為の指針を指し示していました。
そして、新型コロナという未曾有の危機を経た後も、私たちは年々、増々様々な複合的危機に直面しています。その中で私たち人類は、人々の意識や身近な生活様式から産業構造や金融の流れに至るまで、あらゆる地球規模での社会・経済活動のあり方等の大きな変容が求められています。そのような中で、国連主導により2030年を目標に持続可能な開発目標(SDGs)が推し進められています。それは世界中で国家を挙げて推進されてはいるものの、しかし、国民意識とは距離があるまま、まるで私たち人類への強制義務でもあるかのように一方的に押し進められています。
「健康」は「生命」の円満な姿です。私たちの「健康」は、土台となる「食」、中心である「心」、活動を促す「動」、私たちを取り巻く「環境」という「食・心・動・環」を整える事により育まれます。そうして私たちが育てる自身の「健康」は、食べ物に命を吹き込むミクロコスモスである土の世界の「豊饒で健康な生命」から、私たちを通して暮らしの中へと広がり、そしてマクロコスモスである地球へと「生命の同心円」を広げていきます。このように生命の円満なる姿である「健康」を私たちが自身の暮らしの中で育てる事は、「健康」という「生命の喜びの姿」の規範を持ちながら、それが様々な波紋を広げて、やがて「同心円」で地球の「健康」へと広がって行きます。
そうした未来を私たちの暮らしの中から始まる事を願い、「くらしば」がスタートします。ぜひ、裏面の案内をご確認ください。参加される方が実践されている「食・心・動・環」を通して育んでいる「健康」をシェアしながら、美味しくて楽しいひと時を過ごしましょう。それを私たちが楽しみ、そして願い実践する事で、私たちの毎日から新しい未来が始まります。今、私たちは司馬遼太郎が「21世紀を生きる君たちへ」の中で託した時代の中を生きています。私たちが地球の中の一員をして生きる未来をお役目としての義務感でなく、自分自身の「健康」という喜びを育てる事で、同心円で地球が幸せなる未来を、是非、皆さんの思いをのせて私たちの中から育んで参りましょう。