食べものを変えると何がどう変わるのか?双子で科学的に検証する 野菜情報VOL.716 令和6年8/4~8/17

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 NETFLIXの「ヒトは食べ物でできている:双子で食を検証」というドキュメンタリーを非常に興味深く拝見しました。8週間にわたり、22組の成人の一卵性双生児(ひとつの受精卵から発生した双胎児で遺伝子がほぼ同じである)を食の違いで、2人の間でどのような肉体の変化が起きるのかを検証をした番組です。双子の片方には野菜のみの食事(菜食)と、もう片方には肉も食べる事が出来るバランスの取れた雑食(ジャンクフードではありません)を摂り続けておもらいます。メニューも身体運動等のメンテナンスも全てスペシャリストによる徹底的なサポートにより、食べ物が体に与える影響のみに焦点をあてています。現代のアメリカの食の実態の中での実験で、日本の食の環境全てが当てはまるわけではありませんが、その結果は非常に興味深い内容でした。

その8週間の実験を終え、検便と検尿と採血、それにⅩ線で計測します。そして身体組成(体重・体脂肪量や体脂肪率、筋肉量、内臓脂肪量、骨量)、脳機能、腸内細菌、エピゲノム(遺伝子への後天的変化)を検証し、8週間で食の違いの変化を調べます。まず身体組成に関しては雑食の方は体脂肪・筋肉量・内臓脂肪はほとんど変化がなく、菜食の方は殆どの数字がマイナスになっていました。この二つの食の違いの対比として最も分かりやすい表現をすれば、それぞれの一番の変化を起こしたのは、雑食の方が筋肉量を増やし、菜食が内臓脂肪量を減らしたという事でした。認知機能検査については8週間という短期間という事もあり、その差は生じないのではないかと予測していましたが、結果は違いました。悪玉コレステロールの高値がアルツハイマーのリスクを上昇させると考えられていますが、その悪玉コレストロールが雑食の場合は8週間前と8週間後ではほぼ同じであったのに対して、菜食の場合は8週間後に平均で10%減少しました。この悪玉コレストロールは脳以外に心臓や血管の詰まり等様々な身体への悪影響があります。また腸内細菌についても雑食の方は変化がありませんでしたが、菜食は善玉菌の増加が確認されました。

エピゲノム(遺伝子への後天的変化を調べる)では、染色体を保護しているテロメアの長さを調べます。テロメアは加齢により短くなるため、生物的な年齢を測る指標に使われます。もし長いままなら健康状態が良く暦年齢に比べて生物的年齢が若いという事になります。逆に短ければ暦年齢に比べて加齢が進んでいると言えます。実験まえ双子のテロメアは同じ長さでした。8週間後、雑食は長さに変化はありませんでしたが、菜食は全員テロメアが長くなり、生物的年齢を下げるという驚きの結果が出ました。これは菜食が細胞の加齢を逆回転させた事になります。人間は遺伝子により一生を決められているのではなく、食習慣で身体を変え未来を変える事が出来るのです。

このドキュメンタリーのサイドストリーでは、私たちが食べている工業型の畜産や漁業の実態が浮き彫りにされています。生命の尊厳を全く無視したその生産現場は、さらに地球環境を破壊している事実を突き付けます。そうした現実の中で、食べ物を変え私たちが健康になる事が、実は地球環境を良くする事につながる事を、この番組は私たちに訴えています。それは最後に流れる「食べ物を選ぶだけで人間や地球の抱える多くの問題を解決できます。」という言葉に尽くされています。

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