私たちが頂いているりんご畑で何が起きているのか? 野菜情報VOL.713 令和6年7/14~7/20

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 最近、りんごや梅、サクランボ等が「例年にない不作」という事で、ニュースによく取り上げられています。そこで、今週は「げんきの市場」がりんごを頂いている青森の伊藤さんと長野県の小林さんに、「りんご畑で何が起きているのか?」をお聞きしました。

 青森県のりんご農家の伊藤さん

「りんごの花は、芽から5~6つが放射状にまとまって咲きます。これを『花そう』といいます。この『花そう』の中心で最初に咲く花を『中心花』、少し遅れて咲く周りの花を『側花』と言います。普通なら『中心花』だけを残して『側花』を外して、良いりんごになります。それが、その『中心花』が咲かないものやないものがあり、その場合は『側花』を残すんですが、そうすると色づきが悪かったり小さかったりして良いりんごには育ちません。それが例年よりかなり多かったですね。このような様々な異常事態が起きた原因は色々言われていますが、りんご研究所(青森県産業技術センターりんご研究所)でも因果関係がまだはっきりとはわからないようです。このような状態でりんごの花芽が少なく悪い上に、それに加えて受粉を助けるミツバチやマメコバチが、働くことが出来ませんでした。ミツバチは殆どやってきませんでした。マメコバチに関しては、巣になるアシガヤ(カヤの枝の筒の束)に繭を冬眠させて、春になるとそれを出して、そこから飛び出させて受粉させるのですが、それも殆ど働かない状態でした。アシガヤの中を覗くと、マメコバチが幼虫のままダニやシラミに殺されていました…。これも冬の温度が高かったのが影響しています。

 長野県のりんご農家の小林さん

「もうここ3~4年、不作が続いています。毎年、花が咲いているときに遅霜が下りて凍霜害を受けています。急激な低温によって生理機能が低下して成長が阻害され、花が凍ってしまい、受粉出来なくなります。昨年のりんご栽培は今までに一番ひどく、本当に厳しい状況でした。今年は今の所、昨年よりはマシですが…。ここ数年、毎年、猛暑で夜になっても温度が下がらないので収穫する前に過熟してしまい、納得のいく品質にするのが難しい状況です。特に残暑は厳しく、それで今まで、その年の一番早い8月下旬に出荷を始めていた津軽の木を8割伐りました。この温暖化の中での決断です。親が大事に育てて、それで受け継いだ木なので、非常に厳しい選択でした」。

 ニュース番組では「価格が高くなる」といった話題が主に取り上げられますが、この異常気象の中で作物を育てている生産者の皆さんのご苦労は並大抵ではありません。今年届いていた伊藤さんのりんごには黒い斑点がありました。まだ、りんごが小さい時に虫にかじられた時のもので、大きくなってからは皮を剥いてしまえばりんごの果肉自体には全く問題ないのですが、それでも、販売には影響がありました。慣行栽培のりんごは青森県と長野県では30~40回以上の農薬が散布して栽培されています。りんごはそうした農薬を1回減らしただけでも致命傷になるほどデリケートな作物です。その慣行栽培でも非常に深刻な被害が出て取り上げられている中で、私たちが食べるりんごの安全性を一番にして農薬を減らす伊藤さんや小林さんのご苦労は並大抵ではありません。

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