今から30年近く前、私が産直運動のグループにいた時、小平市の地域にいくつかのグループがありました。その中にアレルギーが多発しているお子様を持つグループがあり、そこから少し離れた地域にタイヤメーカーの工場の社宅のグループがありました。
アレルギーが多発している地域のグループでは勉強会を開き、風向きなどにより流れてくる工場の大気汚染が子供のアレルギーに影響しているのではないかという話になりました。その話し合いの事をタイヤメーカーの社宅で中心になり産直に取り組まれている方に話すと、「うちのお父さんは家族のために頑張って働いているのに、私からそんなこと言えない」と言われました。
農家が出荷用の野菜と自分の家で食べる野菜とは分けて作るという話や自分の働く工場でつくっている干物は絶対に買わない従業員の話などを「食の実態」として聞いたことがありますが、若かった私は、その奥様の答えはそれと似た不自然さを感じました。
そして、現在も同じような現実は変わることなく社会の中に蔓延しています。かつて添加物の神様と言われた安部司氏が廃棄するしかない食品残渣を添加物により食べ物として再利用している事に対して、「自分は世の中に貢献しているんだ」という自負さえ持っていました。それがいざ自分がつくったミートボールをわが子の食卓に出された時に、「それを食べものではない」とはじめて気付き、以来、添加物の危険性を告発する側に変わりました。
このように心の奥の本心ではそぐわない事でも理由をつけて経済活動を続けている限り、結局、私たち人間は地球という生命圏を傷付けていく存在なのです。
昨年の暮れ、「『生産者との懇親会』を開催して改めて思う『地域共同体』への道のり」のという野菜情報を書いたところ、それを読まれたお客様より、「『げんきさん』はNPOになればいいのよ」とアドバイスをいただきました。その時、私は「経済活動としてやる事に意味があるのです」とお話しさせていただきました。
私たちは経済活動自体が「経世済民」(世を治め、人を良くする)という本来の役割に戻る事が、何よりも大切な事だと考えています。今、私たちを覆う経済は、私たちの「欲望」を刺激し、飽くなきそのエネルギーの歯車に動かされ巨大となりました。この私たちの「欲望」というエネルギーは経済活動の原動力であり、それにより今日の私たちの繁栄は築かれたのです。ただ「欲望」がイコール「経済活動」という事が問題なのです。
今、私たちは「人間本位」の存在から、地球とともに生きる別の私たちへと生まれ変わらなければならない時を迎えています。私たちは食べ物が、空気が、水がなければ生きることはできません。私たちは「地球」という生命体の中で生きている存在なのです。
「欲望」は人類の原動力であり否定する必要はありません。ただ人類が「欲望」にまかせて地球という世界を変えて行こうとすればするほど、「地球」と私たちはボタンを掛け違えたままに、先行きのない未来を選択することになります。人間は地球の中で生きる生命体であり、全ての「生命」は総合的な地球という「生命」との深いやり取りの中で、生命代謝の持続的変化を維持しているのです。
私たち「げんきの市場」は自身の生命と同心円で、土の世界から地球へと広がる「調和」という「生命価値中心の経済」を次の時代の価値として創造したいのです。それは経済活動を身体の自律神経に例えると、「欲望」という交感神経と「調和」という副交感神経がバランスよく制御しあい、この星の中で円満に生きる私たちの未来を選ぶ力になります。
4月18日(火)、生産者の方々との2回目となる懇親会を開催いたします。是非、私たちの暮らしの中から、生命の喜びが育まれる未来へと変えて行きましょう。