愛は農園にある。第十葉
ここさんぽ 中川ゆか
今工事中の越谷駅直結の商業施設では、全国で人気のさまざまなお店がオープン予定。ハンバーガーだけではなく、和食、洋食、中華のレストランやコーヒーショップなど、便利で手軽なチェーン店の食事は、いまや「ファストフード」と呼べる存在です。いつでもどこでも同じ味が楽しめること。安くて早くて量が多いこと。トレンドを押さえた広告。こうした価値観は、忙しくて情報にあふれた現代社会にぴったり合っているように見えます。
ですが、ファストフードを選ぶことで、私たち自身が「忙しさ」を加速させているかもしれません。産業としてのファストフードは、効率を最優先した働き方や巨大な流通体制を前提に成り立っていて、現代社会の仕事の多さや時間のなさを悪化させます。そして、全国に同じ商品を安定して届けるためには、長距離輸送や食品添加物が必要です。過剰な食材確保によって食品ロスも生じます。流通に合わない食材や、地域独自の料理は姿を消します。こうして健康や環境、食文化が失われていきます。また、地域での農と食、人と人とのつながりも薄れていきます。
ファストフードを選ぶことは、その価値観に知らず知らずのうちに染まっていくこと。気づかないうちに、私たちの「当たり前」が書き換えられているかもしれません。こうした問いを食育の先駆者アリス・ウォータースさんは著書『スローフード宣言』で投げかけています。
一方で、地域の野菜を使った料理には、旬の味わいや五感で感じる美しさがあります。手間はかかるけれど、満足感があり、地域とのつながり、農ある風景を守ることができます。食べることは生きること。食の選択は、健康だけでなく、環境や社会、経済、そして未来のあり方にもつながっています。
とはいえ、ファストフードを完全にやめるのは難しいこともあります。だからこそ「1回チェーン店に行ったら、次は地域のお店に行ってみる」、そんなバランスのとり方も大切。地域のお店を応援していきましょう。
また、情報にもバランスが大事です。今はスマホで楽しい動画を手軽に見られます。楽しむ時間は必要ですが、未来を考える映像にも触れてみませんか。11/8(土)にアリスさんの映画を上映します。大学芋と豆乳ヨーグルトを用意してお待ちしています。
*ローゼルでジャムを作ったら、鮮やかな赤色と甘酸っぱさが素敵でした。
