向かい風の中で守り抜いた横山さんのJAS有機コシヒカリ 野菜情報VOL.755 令和7年7/6~7/12

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 6月17日、福島県会津若松の横山幸喜(よこやまこうき)さんのところにお邪魔いたしました。横山さんは40年以上有機農業に取り組んでいる生産者で、2000年のJAS有機認証のスタートと共に、「あいず有機農法生産組合」を立ち上げ、組合長として現在まで福島県の有機農業を牽引されています。「げんきの市場」では4年前の2021年より横山さんの「JAS有機コシヒカリ」を販売させて頂いています。25歳の時から有機栽培で野菜を生産されてきた横山さんは、当時取引をしていたグループに、「米どころ会津のJAS有機栽培で育てた美味しいコシヒカリを食べたい」と頼まれ、慣行栽培から3年の転換期を経て2011年よりJAS有機栽培のコシヒカリの生産をスタートしました。しかし、その年は東日本大震災が発生した年で、横山さんのお米は福島県産というだけで、以来10年間、JAS有機米としてではなく、業務用米として流通させるしかありませんでした。

福島県は東西に広がる長い県で、会津若松は原発のあった双葉町から直線なら100km圏外です。距離的には宮城県の仙台や茨木県の水戸と同じだけ離れています。しかも、福島県の中央には2000m級の山が連なる奥羽山脈があり、それが天然の要塞となって、有難いことに放射能汚染とは当初から全く無縁でした。しかし、それでも「福島県産」というだけで消費者からは拒否され続けました。それまで横山さんたちは安全な作物を作り続け、消費者から喜ばれていたので、「あいず有機生産組合」の作物は安全である事を理解していただくため、徹底的に放射能検査を実施して、毎年、放射能検査の結果を公表してきましたが、風評被害の状況を変えることは出来ませんでした。

今、横山さんは次男の歩(あゆむ)さん38歳と、三男の大地(だいち)さん35歳と奥様の4人で15町(有機栽培2町4反)の水田と、四季を通じてJAS有機栽培の野菜を生産されています。三男の大地さんは9年前に、次男の歩さんは5年前に脱サラして農業に入りました。お二人とも、農業を始めるにあたっての特別な思いは言葉を濁して答えられませんでしたが、ずっと安全な作物を作り続けていたお父様が、「福島産」というレッテルの中で苦労しながら農業を続けている姿を見て、「自分も親父と農業をやりたい」と思われたのでしょう。幸喜さんは有機栽培での米作りのご苦労について、「やはり除草が大変ですね」と答えられ、「親子3人で1枚の田んぼの雑草を3日間かけてとる事もあるんですよ」と、その大変さを話されています。また、猛暑の影響をお伺いすると、「実は昨年の猛暑の中でも、うちは例年通りお米が穫れたんですよ。福島はその前の一昨年もものすごい猛暑で、その時は収量が落ちました。その教訓があり、水を深く張り澱まないように常に循環させ、終盤に穂肥を与えて稲を元気にする事である程度対策が出来ました」との事です。空前の向かい風の中で安全で極上の「コシヒカリ」を作り続けた幸喜さんの背中を、今、未来の農業を担う二人の若者が支えています。

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