小学校1年生の凪(なぎ)くんという男の子が字を書けるようになって初めて書いた作文が一冊の絵本になりました。本の題名は「にんげんばかり そばをたべるのは ずるいよ」(2025.5.27刊 童話屋)です。凪くんの住んでいるのは宮城県気仙沼、8月8日、お父さんとお母さん、それに妹のあかりちゃんとあいちゃんの5人で津波で汚れた畑を綺麗にして蕎麦の種をまきました。蕎麦の成長を楽しみにしていた或る日、畑より少し高い山の所の罠に鹿がかかり、「害獣だから」と言いって猟師の人が撃ち殺しました。そしてお父さんは畑の周りに網を張りました。でも凪くんは「しかにもそばをたべてほしいです。にんげんばかりそばをたべるのはずるいとおもいました」と絵本に綴り、そして「にんげんとしかがなかよくなったらいいです」で終わっています。凪くんは「網の外にいたしかがさみしそうだったから作文に書いた。」と、その思いを後で話しています。
凪くんのお祖父さんは、先週の野菜情報VOL.773でご紹介した「森は海の恋人」を合言葉に漁民による植林活動を進めた、哲学者で漁師の畠山重篤(はたけやま しげあつ)さんです。畠山さんは孫が初めて書いた作文の「にんげんばかり そばをたべるのは ずるいよ」という言葉に「カミサマのことばではないか」と感動し、一生に一度しか書けないこの孫の作文を絵本にする事を闘病中の自身の最後の仕事として取り組み、最終校正を見届けたのち、2025年4月3日に天国へ旅たれました。畠山さんはこの絵本に「海が嵐で荒れることを『時化』(しけ)と言いますが、時化がおさまり凪(な)ぐまでは漁民は待つしかありません。大津波(東日本大震災)で蹂躙(じゅうりん)された海は大時化でした。時化は自然現象をさす言葉ですが漁師にとって環境破壊や紛争(ふんそう)も時化といえます。凪(なぎ)は究極の祈りです」というエッセイを寄せています。
相次ぐ熊被害がニュースとなり、日本国中で農作物の獣被害は深刻化しております。「げんきの市場」の周囲の生産者の方も同じように被害に合われています。この状況を改善する為に何をしたらいいのか、今の私にはわかりません。ただ、現在は銃で殺害したり網をはり侵入を防ぐしかないかもしれませんが、いつか畠山さんが森に植林をして「きれいな海」を取り戻したように、私たちも、私たちの手で全ての生き物と共生出来る未来を模索していかなければなりません。
