東日本大震災を経て    私たちがたどり着いた           切実なる思い

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野菜情報VOL.764 令和7年10/5~10/11

 新日本風土記(NHK)で「夏の福島 浜通りの青春」という番組が放送されました。浜通りとは福島の海側、東側の太平洋と阿武隈山系に挟まれた南北160kmの長さに及ぶ地域です。福島第一原発があった浜通りは2011年の東日本大震災で最も被害を受けた地域でした。それから13年が過ぎ、当時は幼かった子供たちが若者となり、それぞれが夢を描きながら過ごした夏の姿を追いかけたドキュメンタリーです。両親を幼い時に亡くし漁師の祖父に育てられた青年が祖父のようになりたいと漁師を志して働いている姿や、今でも帰還困難区域のゲートのある大熊町へ移り住んで農薬や化学肥料を使わない自然農の農家とし暮らす若いフランス人女性など、沢山の若者たちの夢が描かれていました。それぞれが目の前にある目標に向かい、ひた向きに生きる姿が輝いていました。

 東日本大震災の直後、野菜情報に「より良い明日をつなぎ合わせるために」という文章を書きました。「2011年3月11日14時46分、私たちの時計が止まりました…。その時まで、欲望のまま生きることが人間の本来の姿だと思っていました。経済効率は私たちの万能のものさしでした。そうした生活、当たり前に訪れる日常は、永遠の繁栄を約束してくれると思っていました…。今、わたしは切実に願っています。地球の多くの生命とともに生きていける未来を。大自然のその美しさの中で、生命が豊かに実り、潤い、そして循環していける地球を、子供たちに残したいと願っております。」それはあの震災をへて、未来への明かりが閉ざされた中での心からの切なる叫びでした。

 今、私たちはこの時代の中で「人間本位」の存在から、地球と共に生きる別の私たちへと生まれ変わらなければならない時を迎えています。私たちは食べ物が、空気が、水がなければ生きる事は出来ません。私たちは「地球」という生命体の中で生きている存在なのです。「欲望」は人類の原動力であり否定する必要はありません。ただ、人類が「欲望」にまかせて地球という世界を変えて行こうとすればするほど、「地球」と私たちはボタンを掛け違えたままに、私たち自身の先行きのない未来を選択する事になります。人間は地球の中で生きる生命体であり、全ての「生命」は総合的な地球という「生命」との深いやり取りの中で、生命の代謝の持続的変化を維持しています。

土の健康が作物に宿り  
      作物の健康が人間に宿り  

人間の健康が社会にやどり  
      社会の健康が地球に宿る

 健康とは生命という宇宙が円満に調和をした状態です。私たち「げんきの市場」は、自身の健康と共に広がる地球の健康を暮らしの中で育てていきたいと願っています。そして、それこそが私たちが次の時代の価値として創造したい、「生命という価値を中心にした経済」なのです。これまでの私たちの文明が「欲望」というエネルギーにより進歩を遂げた事を否定するのではありません。今、私たちは「欲望」を制御する新たな経済価値が必要なのです。それが「生命価値」なのです。それを例えると身体の自律神経のように、「欲望」という交感神経と「生命」という副交感神経がバランスよく制御しあい、この星の中で円満に生きる私たちの未来を選ぶ力になると信じています。

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