横山幸喜さんのコシヒカリがJAS有機栽培の認証を受けた2011年、東日本大震災が起きました。それ以前の「有機栽培転換中」の時代から、老舗の流通業者から安全な会津の極上米として引く手あまただった横山さんのコシヒカリは「福島県産」という理由でいっせいに取引がストップされました。
横山さんは福島県会津若山市で1983年、25歳の時に有機栽培で野菜づくりをスタートしました。そして、2000年のJAS有機認証のスタートと共に「あいづ有機農法生産組合」を立ち上げ有機栽培農家として活動していく中で、取引をしていた「自然農法の販売グループ」から、安全な会津産の米をつくってほしいとの要望が上がりスタートしたJAS有機栽培コシヒカリでした。有機栽培認証を取得するために必要な2年間の無農薬無化学肥料栽培の「有機栽培転換中」の期間を経て、JAS有機栽培コシヒカリの認証を得たのが2011年だったのです。
「それ以降、有機栽培でありながら、有機栽培として私のコシヒカリは取引されることはなく、一般の業務用コシヒカリとして流通し10年が過ぎました。それがやっと、今年になって福島県にある酒蔵メーカーが有機栽培の酒米として取引していただけることになったのです」(横山さん談)
福島県は北海道、岩手県に次いで3番目に広い面積で東西に広がった地形をしています。横山さんが営農されている会津若松は原発の中心地から100km圏外であり、直線では仙台や水戸と同じような距離にあります。さらに福島県の南北にまたがる2000m級の山がつらなる奥羽山脈が天然の要塞となり放射能の汚染は当初から存在しませんでした。少しでもその現実を知って欲しいと、「毎年『あいづ有機農法生産組合』として徹底的に、放射能検査を実施して安全なことをアピールしてきましたが、『福島県』という県名で消費者には拒絶され続け現在に至っています」との事です。
福島県の会津地方は「特に美味しいお米」がとれる産地で、毎年発表される「食味ランキング」(日本穀物協会)では、最高に美味しい「特A」ランクの常連です。奥羽山脈から届く上質な岩清水、そして、その山々から吹きおろされる「風」が稲の茎を太く育て、さらに盆地特有の朝晩の温度差が甘みを加えて稲穂を実らせます。試食をさせていただいて驚いたのが、冷めた時のご飯の粘りでした。温かいときはもちろん、冷めた時にしみじみとその質の高さ、「極上の米」を感じ感動しました。
東日本大震災から10年目の節目を迎え、メディアでは東北の人たちが経験した絶望しか存在しない現実の中で、未曾有の苦しみを生き抜いた姿が数多く語られていました。私たちはそれらの事実に目を背けることなく、同じ時代を共に生きる1人として歩んでいきたいと願っております。横山さんのJAS有機栽培コシヒカリの新規取り扱いをスタートいたします。