私たちの暮らしの中にすでにある 「日々を彩る本来の喜び」野菜情報VOL.755令和7年6/22~6/28

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 お店に買い物に来られたお客様から「いいものをあげるわ」と、新聞の切り抜きを渡して下さいました。それは今から23年前、2002年8月29日の日付の「ショッパー」という地域新聞の記事でした。そこには「“食と農のつながりを見つめ直して” 商品としての野菜から命としての野菜へ」というタイトルと共に「げんきの市場」でスタートした地場生産者の直売市の1周年記念セールの記事が掲載されていました。地域の生産者の方の直売市をスタートして間もない頃のもので、その中で40歳だった私は「“有機野菜”という名のブランド品を売るのではなく、その向こうにある“畑”を伝えたい」と語り、野菜を手にした生産者の方々と一緒に写真に写っていました。

それから23年が過ぎ、私は63歳なり、当時、40代、50代で働気盛りだった生産者の方々も60代70代となりました。先週の野菜情報で「げんきの市場」に出荷されているほとんどの生産者が1人農業だと書きましたが、その当時は両親やご夫婦の4人で農業をされていた方々も、現在では1人農業になっているのが現実です。市街化が進んで行く街並みの変化の中で、実際、農地で野菜を作っているよりも、駐車場にした方がよっぽど効率よい経営が出来ます。そうした現実の中で、地域のオーガニックの農家の方々がいつまで農業を続けていってくださるのかわかりません。ただ、そのような中でも「農業を愛し、少しでも長く続けていただきたい」と、心から願っています。

なぜなら、これ程素晴らしい「私たちの楽園」はないからです。暮らしの中に「土の世界の命から大切にする農業」があり、その中で育った野菜が直ぐに届く事は、本当に稀有な事なのです。薬剤を使わずに育つ野菜にはこの土地ならではの常在菌が住み着いています。それは私たちの腸内細菌を豊かにする細菌たちであり、そしてその野菜たちは、マクロファージを活性化し免疫を高め(LPS)、ガン細胞の抑制する(レスベストール)事も分かっています。そして、何よりそうした野菜たちは美味しいのです。「ホント、『げんきの市場』の野菜だと調味料がいらないのよ。野菜が美味しいから…」と、お客様に良く褒めていただくことがありますが、私も食べ続け、全く実感しています。そうした野菜の美味しさは心に届く、日々の暮らしの本当の「豊かさ」を実感できるのです。

私が「げんきの市場」を始めた時、首都圏の中で街と畑が同居するこの場所で、畑と共に自然を残す事が出来たならば「暮らしの在り方」のモデルとなると思いました。そして、「畑」と「人々の暮らし」が繋がる事により、私たちが自然界から頂いている「喜び」を暮らしの中に取り戻す事が出来ればと続けてまいりましたが、決してそれは成功したとは言えません。そして、私が「野菜」と共に「畑」を届けたいと願ったのは、自然界の「喜び」と共に、その中で野菜を育て、私たちの暮らしを支えている生産者の方々への「心からの敬意」でした。かつて、私たちの国には「一粒の米を大切にする」心がありました。それを取り戻さない限り農業の衰退を止める事は出来ません。

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